7月12日、東京港区の増上寺で行なわれた安倍晋三元首相の告別式には沿道に多くの人がかけつけたが、一方、奈良市の近鉄大和西大寺駅前の事件現場でも事件直後から献花に訪れる人が断たず、現在も多くの人が花束や飲み物、手紙などを手に訪れている。
献花台には花が溢れんばかり供えられ、花がいっぱいになるとスタッフが丁寧に段ボールに移し替えて回収。積み重ねられた段ボール箱は定期的にトラックに積み込まれていった。人々の想いが詰まったこの花は一体どこにいくのか。
その答えは、安倍元首相が銃撃された際に応援演説を受けていた自民党の佐藤啓氏が選挙時に設立していた後援会事務所でわかった。室内ではボランティアが献花を整理する作業の最中で、約50本程度の献花が入った段ボール箱が30箱ほど積まれていた。作業中のボランティアに話を聞いた。
「献花の一部は一番最初、(奈良市内の)大安寺に運ばれていたんですが、その次にこの(佐藤氏の)後援会会場に運ばれてきました。(献花台が設置された7月9日には)1日だけで1000箱分の献花があったと聞いています。頂いた献花は飾っていましたが、選挙も終わり、痛んできた花も増えてきたのでビニールと花をわけたうえで段ボール箱に入れています。この後、花は回収され、肥料になります。この作業をしていると安倍さんがどれだけ思われていたかを痛感します」
献花台には、家族連れ、夫婦、一人で参列する人など世代も多様で、10代の若者も多くいた。事件2日後、献花に訪れていた高校生2人組に話を聞くと、「ニュースを観て、2人で誘い合わせて電車で来ました。政治のことはよく知らないし、自民党支持じゃないけど、安倍さんは尊敬できる人、信頼できる人でした」と語っていた。
安倍氏を悼む多くの人の想いは土に還り、新たないのちを育むことになる。