コロナ禍で急増したのは病気の「受診控え」だけではない。大きな病気の早期発見につながる検診を控える「検診控え」もまた問題になっている。新型コロナよりも深刻な大病が見つかって手遅れになる前に、受けておくべき検診とはなにか。東海大学名誉教授で医学データ解析に詳しい大櫛陽一さんは、死亡原因の上位を占めるがん検診の受診を推奨する。
「がん検診には、死亡率を下げるエビデンスがあり、検診を受けて早期発見・早期治療できるかどうかが生死を分けることにつながる。女性で死亡率トップの大腸がんや罹患率の高い乳がん、肺がん、胃がん、子宮頸がんなど、自治体で行われているがん検診は積極的に受けるべきです」(大櫛さん)
とはいえ、ほとんどのがん検診には複数の検査方法がある。何をどう受けるべきか。ときわ会常磐病院の乳腺外科医、尾崎章彦さんが語る。
「女性の死因第1位とされる大腸がんは『便潜血検査』がまずすすめられます。患者にとっても医療者にとっても負担感が少ない。ただ、精度が限定的であるため年に1度は受ける必要がある。
一般に毎年の便潜血検査が10年に1度の大腸内視鏡検査と同等の効果があるとされています」(尾崎さん)
検査の方法は、便の表面をブラシのような器具でこすって検体を採り、2日分の検体を容器に入れて提出するだけ。痛みや時間的拘束とは無縁だ。
住吉内科消化器内科クリニック院長の倉持章さんが言う。
「大腸がんや直腸がん、大腸ポリープなどを見つけられる検査であり、それらは早期発見できれば、かなりの確率で根治できる。500円程度の安価な検査ですから、ぜひ毎年受けてほしい」
便潜血検査と並んで精度が高いとされる大腸内視鏡検査だが、こちらは体への負担が少なくない。
「確かに精度は高いですが、検査前に下剤をのんで腸内を洗浄する必要があるうえ、痛みを伴うこともあります。また、一般に、自治体の検診では実施されず、精密検査で初めて実施されます。すなわち、簡便な便潜血検査を毎年受け、ポリープやがんの疑いがあった場合に内視鏡を受けるという“二段構え”の体制が取られています」(尾崎さん)
※女性セブン2022年7月28日号