参院選の投開票を2日後に控えた7月8日午前11時31分、古都・奈良の駅前に2発の銃声と悲鳴がこだました。戦後最年少にして歴代最長の総理在任期間を記録し、志半ばで凶弾に倒れた安倍晋三氏の足跡を、報道写真家・山本皓一氏が撮影した秘蔵写真で振り返る。
初出馬の5年前、1987年6月に新高輪プリンスホテルで行なわれた結婚式会場での安倍晋三・昭恵夫妻。2人の出会いは見合いで、仲人は福田赳夫元総理夫妻が務めた。
闘う政治家でありたい──。自著『美しい国へ』で決意を語っていた安倍氏は、出版された2006年に戦後最年少52歳で総理大臣に就任。参院選の大敗と健康状態の悪化を理由にわずか1年で辞任したが、2012年からの第二次政権では経済でアベノミクス、外交で「地球儀を俯瞰する外交」を掲げるなど、打って変わって「安倍一強」と呼ばれる政治情勢を作り上げた。
在任の約8年間、衆参合わせて6回の国政選挙でいずれも勝利。コロナ禍の20年に健康を理由に再び総理を辞任したが、体調を回復させると安倍派を立ち上げ、党内のみならず広く存在感を発揮した。
その歩みは母・洋子さんに見守られながら、総理の座を目前にして病没した父・晋太郎の遺志を継ぐ旅だったのかもしれない。
自邸で撮られた母・洋子さんとの貴重な1枚。岸信介の長女であり、夫・安倍晋太郎、息子・晋三の3代で自民党の要職を担った母は、「ゴッドマザー」と呼ばれた。銃撃事件翌朝、息子との悲しみの対面を果たした。
7月10日の参院選は、改憲勢力の圧勝に終わった。悲願の改憲を目前に、歴代最長を誇った宰相は、あまりにも突然に逝った。
写真/山本皓一 構成・文/小野雅彦
※週刊ポスト2022年7月29日号