名作のリメークは世界で行なわれているが、プロットが共通するゆえ、評価の軸は演者にかかってくることが多い。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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竹内涼真主演のドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日系木曜午後9時)が話題を集めています。何といってもNetflixで人気を博した韓国ドラマ『梨泰院クラス』の日本版リメークゆえに、2つのドラマを「比較」したくなるのは人情です。
主人公・宮部新を演じているのは竹内涼真さん。韓国版主人公セロイのトレードマーク、イガグリ頭にした竹内さんを見た時は、「これで大丈夫なのか」という心配がわき起こりました。しかし、第一話が始まると竹内さんの役に賭ける強い意欲が伝わってきて、熱の籠もった演技と集中力に吸い寄せられました。正直、学ラン姿の高校生時代のシーンもちょっと引きましたが、視聴者が白けて醒めてしまう前に、何とか物語の中へと引っ張り込むことができたのではないでしょうか。
考えてみると、本家『梨泰院クラス』の筋立てはある意味、シンプルな復讐劇です。それを16話にもわたって見せ切ることができたのは、個性的な登場人物たちの瑞々しい魅力がはじけていたからでしょう。
例えば主人公のパク・セロイ(パク・ソジュン)は、ポカンとした無垢な少年の表情と復讐にかけるすさまじいエネルギー・怖さ、その非対称的な両面性が魅力的でした。一人の人間の中にある振れ幅や落差が、何ともいえない味わいになっていたのです。
『六本木クラス』でも、新という人物の複雑な魅力をどこまで浮き彫りにできるか。怒りが沸騰し暴走してしまう凶暴性と無垢な純粋さ、両極端の味わいを竹内さんがどこまで的確に表現してくれるか、期待したい。さすが元サッカー選手の竹内さんだけに、格闘シーンの身体はキレていて素早いアクションも印象的。加えて、因縁の相手・龍河演じる早乙女太一さんの、ひやりとする冷たさや不良ぶりもハマっていて相乗効果を生んでいました。
一方、新の幼なじみで初恋の人・楠木優香(新木優子)はどうでしょうか?
高校時代の優香を演じた新木さんは、どうやっても十代には見えなくて、ちょっとこの役はつらいかなと思いきや……。大人になり長屋ホールディングスのスタッフになった優香の演技は、なかなかハマっています。強い意志を内面に秘めた優秀なビジネスウーマンを新木さんがきちんと体現していて一安心。韓国版スア役のクォン・ナラさんの面影と新木さんがどことなく似ている点もアドバンテージと言えるでしょう。