「5剤以上の服用で副作用の可能性が上昇」「薬の効きすぎがふらつきや転倒、認知症リスクを上げる」……など、『女性セブン』は繰り返し薬を飲みすぎることの弊害を伝えてきた。糖尿病の治療では日常的に内服薬やインスリン注射を使用することが多いが、高雄病院理事長で内科医の江部康二さんは薬の弊害を指摘する。
「糖尿病治療に使われるのは主に内服薬9種類とインスリンなどの注射薬2種類。内服薬は大きく分けて、インスリンの効きをよくする薬、インスリンの分泌を促す薬、糖の吸収や排出を調節する薬の3種類あり、病状によって複数の系統の薬を組み合わせるのが主流です。ただ、いずれも副作用があります」
特に強い副作用を持つのが、インスリンの分泌を促すスルホニル尿素薬(SU薬)や速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)の薬剤だ。
「SU薬とグリニド系の薬剤は、すい臓のβ細胞に直接作用してインスリンの分泌を促します。血糖値を半ば強制的に下げるので低血糖に陥るリスクが高い。低血糖を繰り返すと転倒して骨折することもあり、認知症のリスクも高くなります。さらにSU薬は、インスリンを分泌するβ細胞を徐々に障害していく可能性が指摘されているため、特に使用を避けたい。うちの病院ではほぼ処方していません」(江部さん・以下同)
江部さんの病院では、そうした薬を極力使わずに治療するために、徹底した糖質制限を実施している。
「私自身も52才のとき、メタボとともに糖尿病と高血圧が発覚しました。そこで、当院が当時取り入れ始めていた糖質制限食を試してみることにしました。すると1か月で血糖値やHbA1cは正常化し、半年で10kg体重が落ち、血圧も正常化しました。内臓脂肪もみるみる減って、薬なしで糖尿病が改善したのです」
江部さんによれば、糖質を控えることで血糖値が安定し、薬がいらなくなるのだという。
「糖質を控えるには、ご飯やうどん、パンなどの炭水化物は少なめにして、肉や魚、大豆などの脂質とたんぱく質はしっかり摂る。お米を豆腐やキャベツなどに置き換えて、外食時は糖質制限メニューを活用してみてください。糖質制限を実践すると、インスリンの分泌が必要最低限に減って、血糖値の乱高下がなくなります」
併せて取り組むべきは「1日2食生活」だ。江部さんは毎日、約17時間の“プチ断食”を行っている。
「朝はコーヒーに生クリームを入れて飲むだけで、何も食べません。食べるのは昼食と夕食のみ。前日の夕食から当日の昼食まで約17時間の断食になりますが、この間ずっと血糖値の乱高下が起きないうえ、内臓脂肪が燃焼しつづける。血糖値を下げ、糖尿病を治すための近道です」
多くの糖尿病患者と向き合ってきた江部さんは、減薬できる人の特徴をこう話す。
「薬を減らせるのは“医者任せ”にしない人。最近はネットでも糖質制限に関する情報が手に入るし、血糖値を自己判定できる機械も販売されています。医師に相談することも大切ですが、最終的には自分の体に責任を持てる人こそが、減薬を実現できるのです」
※女性セブン2022年8月4日号