2022年4月から、国の「不妊治療に対する取組」として、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることになった。それまで不妊治療は基本的に自費であり、不妊に悩む人たちにとっては費用の面が大きな壁となっていたが、今回の保険適用は、この国の長年の課題である少子化対策として、一筋の光となった。
あまり知られていないが、不妊治療の保険適用は前首相の菅義偉氏がかねて進めてきた肝いりの政策だった。なぜ少子化問題に関心を持ったのか、菅氏本人に聞くと、そのきっかけは「国政に進出する前にあった」と振り返ってくれた。
「今から30年以上前、私が横浜市議会議員を務めていた時に、待機児童問題に直面しました。当時の横浜は深刻な状態で、市議として様々な策を講じました。結果的に、この問題に取り組んだことが、後に国政に出るきっかけの一つでもありました。
待機児童問題に取り組んでいるうちに、今後は『少子化問題』が日本で深刻化していくであろうことを実感したのです。それから医療業界を初めとした関係各所から、色々な話をうかがいました」
聞き取りをしていく上で、心に残っているエピソードがあるという。
「特に印象的だったのは、不妊治療を行なっていた女性の『今の自分の状況だと不妊治療を続けるか、仕事を続けるか、どちらかを選ばざるをえない』という話でした。つまり社会において、保険適用されていない『不妊治療』という医療行為が馴染んでおらず、その女性のように当事者の方がどこか後ろめたい思いをしながら行なっている現実があったわけです。その意味で、今回の保険適用は大きな進展だと言えると思います」