慢性的な頭痛に悩む女性は多いが、その原因は、“薬ののみすぎ”の可能性があると指摘するのは、はしぐち脳神経クリニック院長で脳神経外科医の橋口公章さんだ。
「片頭痛を訴える人に多いのは、鎮痛剤をのみすぎて、その副作用として痛みが出ているパターンです。特にロキソプロフェンやアスピリンなど『NSAIDs系』に分類される非ステロイド性抗炎症薬は“薬物乱用頭痛”を引き起こす危険性があります」(橋口さん・以下同)
頭痛を訴えて橋口さんの病院を訪れる患者のなかには、頭痛薬を毎日手放せない人、用量以上をのんでしまう人もいるという。乱用してしまう原因の多くは、痛みへの恐怖だ。
「痛みが出る前に不安だからとのむ人が多いですが、これはたばこやお酒の依存症と同じ状態です。一般的に、3か月以上のみつづけると、依存状態に陥りやすくなるとされています。また元来、脳には痛みを抑制する働きがありますが、痛み止めに頼り続けることで反応が鈍くなり、抑制できなくなってしまう。その結果、より強く痛みを感じるようになります」
原因が薬物性かどうかの判断は難しく、脳卒中や脳腫瘍など生命の危険にかかわる病気の兆候の可能性もあるため、これまでに経験のない新たな頭痛が突然生じた場合や、痛みがつづく場合は一度病院で検査を受けた方がいい。
「脳のMRIやCT検査をして異常がなければ、薬ののみすぎで痛みが出ている可能性が高い。薬物乱用頭痛から脱するためには、頭痛を起こしにくくする“予防薬”を3か月ほど処方して痛み止めの服用量を減らし、治療します。生活習慣が頭痛の原因となっていることも多いため、併せて指導も行います」
生活習慣を改善するために有用なのが“頭痛ダイアリー”をつけること。
「頭痛の頻度や症状、痛み止めをいつどのくらい使用したかなどを記録する日誌です。書くことで、薬ののみすぎの把握はもちろん、自分がどういうときに薬をのんでいるか、どのようなタイミングで頭痛が起きているかを客観視でき、原因も推測できます。
トリガーとしていちばん多いものは低気圧で、その次が月経前や月経中などホルモンバランスの変化です。その他、人混みや炎天下で頭痛が起こりやすい人もいます。チョコレートやチーズに含まれるチラミンという物質が原因になることがあります。成人の罹患者が最も多い『緊張型頭痛』には、肩や首のコリやストレスが影響していることもあるので、ストレッチや運動なども指導しています」
※女性セブン2022年8月4日号