序盤は横綱・大関に相次いで土がつき、今場所も平幕が引っ張るかたちで始まった大相撲7月場所。後半は横綱が踏ん張り、大関も意地を見せたが、12勝3敗で優勝したのは平幕の逸ノ城だった。昨年1月場所の大栄翔以来の平幕優勝だが、上位陣が星を次々と落としたことに加え、コロナによる途中休場が相次いだことで次の9月場所の番付編成は、かつてなく難しいものとなりそうだ。
今年に入ってからの成績を見返すと1月場所と3月場所は関脇(御嶽海、若隆景)が優勝。4度の本場所で横綱、大関の優勝は1度だけだ。また、1月場所こそ御嶽海が13勝で優勝したが、3月場所と5月場所はともに12勝で優勝が決まっており、今回の7月場所も含め3場所連続で12勝での優勝となった。これは15日制となってから2度目という珍記録である。
さらに今場所は新型コロナによる休場が相次いだ。場所前に感染が発覚した田子ノ浦部屋を含め、43部屋のうち13部屋が休場に追い込まれた。13日目には伊勢ノ海部屋、片男波部屋、追手風部屋、芝田山部屋と関取を多く抱える部屋に感染者が出たことで、幕内18番のうち7番が「不戦勝」となった。
千秋楽には八角理事長(元横綱・北勝海)の部屋でも感染者が出て幕内の2番が「不戦勝」となり、表彰式では八角理事長に代わって事業部長の陸奥親方(元大関・霧島)が天皇賜杯を逸ノ城に手渡した。
全力士627人のうち174人が休場し、関取と呼ばれる十両以上の力士では休場者が23人にのぼった。相撲担当記者はこう言う。
「相撲協会にとって想定外だったのは場所中に感染者が出たことだろう。7日目に出羽海部屋で感染者が判明したことで、部屋の力士19人が休場に追い込まれた。感染者が1人でも出れば所属力士は全員休場するというルールに従ったものだ。
その結果、7日目から出羽海部屋のカド番大関・御嶽海が2勝4敗で休場に追い込まれたが、その処遇がどうなるかについては諸説が飛び交った。これまで場所前に感染が原因で全休した場合、番付は据え置きか1枚降格という措置がとられてきたが、途中休場は前例がなかったためだ」
その後も6日連続で新型コロナ関連での途中休場が出たことで、状況はどんどん複雑になっていった。勝ち越しや負け越しが決まっていない力士に加え、すでに勝ち越しや負け越しが決まっている力士の新型コロナによる途中休場が混在することになった。
琴ノ若は7勝3敗だった11日目からの休場となり、一山本は休場が決まった9日目の段階で6勝2敗。ともに優勝争いを引っ張っていた。玉鷲は5勝7敗だった13日目に休場が決まったために不戦敗で負け越している。翔猿は8勝4敗の13日目に休場が決まったがすでに勝ち越したあとだった。逆に遠藤は3勝9敗と負け越しが決まったあとで休場が決まった。
「基本的に番付は負け越さない限り下がることはない。今場所も東関脇の若隆景(8勝7敗)、東小結の豊昇龍(9勝5敗)、西小結の阿炎(8勝7敗)と勝ち越し、西関脇の大栄翔だけが新型コロナ関連で途中休場したことで勝ち越せていない(6勝7敗2休)。しかし、13日目に休場が決まった時点では6勝6敗。不戦敗で6勝7敗になったが負け越してはいなかった」(同前)