暗澹たるニュースが続く中、朝目覚めると目の当たりにする二刀流の躍動は、現地アメリカでの熱狂とは違った心に滲み入る感動を日本に届けてくれる。大谷翔平はアスリートの枠を超え、日本人にとって今やかけがえのない存在になった。大谷ファンとして知られる作家の平松洋子さん、タレントの石原良純さん、女優の冨士眞奈美さんに、思いを聞いた。
痺れるような興奮や感動は想像もつかない僥倖 平松洋子(作家)
去年ホームラン王争いをした選手が、今年はサイ・ヤング賞候補になっている──夢物語でさえなかったことを現実にした男、それが大谷翔平だ。
昨シーズン開幕から今日まで、大谷選手が出場するMLBの全試合を観てきた。才能と感情に溢れる姿を見逃せない理由のひとつは、地平が切り拓かれる瞬間が、彼の立つ球場にあるからだ。野球選手の実績は、緻密な分析に基づく数字で語られる。しかし、彼の投打やふるまいが生み出すのは、驚異の数字や記録をさらに超える新たな「価値」。既存の価値や意識が変わる現場を目撃するときの、じーんと痺れるような興奮や感動は、想像もつかない僥倖だった。
今季前半を観届け、思う。「ベーブ・ルース」の名前は、もう必要ない。大谷翔平が未踏の地を歩くさまをこの目で見てみたい、知りたい、一瞬を追いたい。