暑さのせいで何もやりたくなくなるのが夏。そんなときは、涼しい屋内で読書でもして心を落ち着かせてみては? この夏に読みたい新刊4冊を紹介します。
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『やらかした時にどうするか』畑村洋太郎/ちくまプリマー新書/924円
プリマー新書のプリマーとは入門書の意。「失敗学」と「創造学」という顔の似てない双子の世界へ読者を誘う。著者は日本に失敗学を定着させた提唱者。死亡事故になりかけた自身の失敗を語り、3.11原発事故では検証委員会の委員長として、「自分の頭で考えないと大変なことになる」実例に直面。失敗は体験的知識。そこから創造的思考へどう繋げるか、その道筋を柔和に説く。
『39歳からのシン教養』/成毛眞/PHP研究所/1870円
教養不足とお嘆きの皆様。大丈夫、著者はこうぶち上げています。“インターネットを使い倒せ。「ググる力」こそシン教養なり!”と。確かに時事用語でも人名やカタカナでも“ながら”でググると、ノーストレスでサクッと理解が進む。テレビとWikiの合わせ技、2段階ググり術、理系画像&動画の活用法、新キーワードの定期的チェックなど、自ら実践している方法を大公開。
『爆発物処理班の遭遇したスピン』佐藤究/講談社/1760円
佐藤究の本領は短編だったのかと打ちのめされる。量子力学の現象を警察ミステリーに持ち込んだ表題作、クリーチャー界の天才が秘匿した禁断の手法「ジェリーウォーカー」、ヤクザの落とし前を凄惨な滑稽さで描いて映画のような「シヴィル・ライツ」、復員兵の青年が野犬狩りの仕事にありつく戦後史「九三式」など。不穏で不吉でゴージャス。完成度の高さに言葉をなくす。
『臨床の砦』夏川草介/小学館文庫/704円
長野県の指定感染症施設、信濃山病院に勤務する敷島。専門は消化器だが、患者急増のコロナ第3波で2021年年始から患者搬送の業務に立つ。筋立てはフィクションでも、医療崩壊の現実や医師達が晒された緊張や恐怖はノンフィクション。それほど生々しい。この文庫のために書き下ろされた長い「あとがき」がまた読ませる。自分で美談に嵩上げしない医師の気高さを感じる。
文/温水ゆかり
※女性セブン2022年8月4日号