ライフ

失敗学と創造学へと誘う新書『やらかした時にどうするか』など、夏に読みたい新刊4冊

『やらかした時にどうするか』

『やらかした時にどうするか』

 暑さのせいで何もやりたくなくなるのが夏。そんなときは、涼しい屋内で読書でもして心を落ち着かせてみては? この夏に読みたい新刊4冊を紹介します。

 * * *
『やらかした時にどうするか』畑村洋太郎/ちくまプリマー新書/924円

 プリマー新書のプリマーとは入門書の意。「失敗学」と「創造学」という顔の似てない双子の世界へ読者を誘う。著者は日本に失敗学を定着させた提唱者。死亡事故になりかけた自身の失敗を語り、3.11原発事故では検証委員会の委員長として、「自分の頭で考えないと大変なことになる」実例に直面。失敗は体験的知識。そこから創造的思考へどう繋げるか、その道筋を柔和に説く。

『39歳からのシン教養』/成毛眞/PHP研究所/1870円

『39歳からのシン教養』/成毛眞/PHP研究所

『39歳からのシン教養』/成毛眞/PHP研究所

 教養不足とお嘆きの皆様。大丈夫、著者はこうぶち上げています。“インターネットを使い倒せ。「ググる力」こそシン教養なり!”と。確かに時事用語でも人名やカタカナでも“ながら”でググると、ノーストレスでサクッと理解が進む。テレビとWikiの合わせ技、2段階ググり術、理系画像&動画の活用法、新キーワードの定期的チェックなど、自ら実践している方法を大公開。

『爆発物処理班の遭遇したスピン』佐藤究/講談社/1760円

『爆発物処理班の遭遇したスピン』佐藤究/講談社

『爆発物処理班の遭遇したスピン』佐藤究/講談社

 佐藤究の本領は短編だったのかと打ちのめされる。量子力学の現象を警察ミステリーに持ち込んだ表題作、クリーチャー界の天才が秘匿した禁断の手法「ジェリーウォーカー」、ヤクザの落とし前を凄惨な滑稽さで描いて映画のような「シヴィル・ライツ」、復員兵の青年が野犬狩りの仕事にありつく戦後史「九三式」など。不穏で不吉でゴージャス。完成度の高さに言葉をなくす。

『臨床の砦』夏川草介/小学館文庫/704円

『臨床の砦』夏川草介/小学館文庫

『臨床の砦』夏川草介/小学館文庫

 長野県の指定感染症施設、信濃山病院に勤務する敷島。専門は消化器だが、患者急増のコロナ第3波で2021年年始から患者搬送の業務に立つ。筋立てはフィクションでも、医療崩壊の現実や医師達が晒された緊張や恐怖はノンフィクション。それほど生々しい。この文庫のために書き下ろされた長い「あとがき」がまた読ませる。自分で美談に嵩上げしない医師の気高さを感じる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2022年8月4日号

関連記事

トピックス

悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン