開幕からいきなり9連敗し、借金が最大16あった阪神タイガース。ところが、6月に14勝8敗1分、7月に12勝5敗の成績を残し、オールスター戦直前のDeNA戦で借金を完済。勝率5割となり2位タイで前半戦を終えた。7月29日からの後半戦のさらなる巻き返しに虎党の期待が高まっているが、その“お膝元”では例年にない異変が――。
オールスター前の時点で首位・ヤクルトとは11ゲーム差があるものの、残り49試合でどこまでヤクルトに近づけるのか、注目が集まっているタイミングだ。そして、クライマックスシリーズ(CS)進出を目指せる位置にもいる。開幕直後は絶望感が漂っていた阪神ファンにも後半戦に光明が見えてきたことは間違いないだろう。
地元での阪神ファンの盛り上がりを確かめるため、「日本一早いタイガース優勝マジック」を掲示することで有名な尼崎中央三丁目商店街をのぞいてみた。今シーズンも3月23日に“点灯式”が催され、「優勝マジック143」が掲げられた。
同商店街の“マジック”は、プロ野球の正規ルールにおける「マジック」とは違う。基本的には残り試合を表示するが、阪神が試合に負けた時には減らさず、勝った翌日に残り試合数まで一気に減らす仕組みになっている。そのため、今年は開幕からの9連敗によって3月末から4月初旬にかけて10日以上「143」が掲げられたままだった。
開幕10戦目に初勝利した翌日は、商店街の関係者や阪神ファンが集まって“マジック”を143から133へ一気に減らすイベントが行なわれ、在阪のテレビ局や新聞社が大きく報じた。6月の交流戦では6連勝を記録するなどした阪神の復調によって、順調に数字を減らしている……はずだった。
ところが、前半戦が終わった時点で商店街を訪れると、阪神の“マジック”は消えていた。アーケードから吊り下げられたボードには数字がない。商店街には「優勝祈願」の提灯やのぼり旗が掲げられているが、BGMにはいつもの六甲おろしが流れていない。一体、どうしたのだろうか。近くの商店主に聞いてみた。
「他球団にホンモノのマジックが出たら外すことになっとるんや。今年はヤクルトに7月2日にマジック53が点灯した時点でなくなりましたわ。それにしても今年は(消えるのが)早かった。開幕の最下位から交流戦でようやく上向いてきたんやけどなぁ。嘘でも“マジック”がなかったら盛り上がりまへんわ」
今季のヤクルトには、2リーグ制以後最速となるタイミングでマジックが点灯。正真正銘の「日本一早い優勝マジック」が点灯したことで、商店街の“日本一早い優勝マジック”は消灯となったわけだ。
「今応援したらんでどないすんねん」
阪神が優勝争いをしているシーズンは、勝利した翌日には商店街にファンが集まって六甲おろしを熱唱し、“マジック”を減らすと歓声が上がっていたという。もちろん阪神が強いシーズンは商店街もにぎわうが、今年は2位タイに浮上しても影響が見られないという。前出の商店主は「開幕直後の連敗と強いヤクルトがいることで諦めムードが漂っているんですわ」と嘆く。ただ、買い物に来ていた阪神ファンの中年男性はこう話した。
「最下位の時は“マジック”を減らしとんのを見てアホかと思たけど、2位タイやからな。今応援したらんでどないすんねん」