安倍晋三・元首相が銃撃され死亡した事件で、逮捕された山上徹也容疑者が強い恨みを持っていたとされる旧統一教会(世界基督教統一神霊協会、現・宗教法人「世界平和統一家庭連合」)。母親の巨額の献金で家族は破産に追い込まれたとされており、山上容疑者が統一教会に対して抱いていた批判的感情もクローズアップされつつある。
両親が現在も旧統一教会信者だという“宗教2世”で、自身は教会と18歳のときに関係を絶ったという20代後半の女性は、取材に対し「事件を起こした山上容疑者は到底擁護できませんが、自分の中にも『統一教会が不幸の元凶だ』と考えてしまうところはある」と明かす。彼女によれば、「家庭は生まれたときから貧乏で、お小遣いは1円もなかった」という。
「うちは両親が合同結婚式で結婚し、私を含め6人の兄弟がいました。毎朝教祖様の写真に『よろしくお願いします』とお祈りし、毎週日曜日には家族揃って教会に行く典型的な信者の家庭で、『おまえたちは祝福された神の子だ』といつも言われていた。幼稚園のころから『ウチは他の家とは違うんだ』という感覚を漠然と持っていましたが、両親ともに優しくて、無意識のうちに自分を押し殺して『お母さんの期待に応えたい』と思っていました。
辛かったのは、ただただお金がなかったこと。両親にはお小遣いをもらったことが一切なく、親戚からもらったお年玉まで『メシア様に返すんだよ』と没収されました。服や下着も、兄弟や他の信者のボロボロのおさがりを着させられて、それが原因で学校では兄弟もろともいじめられた。集団登校には『くさいから来るな』と言われて参加できず、お金がないから遊びにも行けません。両親は学校の校長先生に『お金がないからなんとか制服をもらえないか』と何度も交渉していました」
高校入学後に始めたコンビニのアルバイトで稼いだお金も、全額両親に渡していたという。
「そもそも社会勉強のためにと始めたアルバイトで、自分のお金が得られるとも思わず全て母親に渡していましたが、ある給料日の夕方、『今大変な時期だから、すぐにお金が欲しい』と母親が直接店に取りに来たことがありました。『必ず返すから』と言われましたが、給料日を知っていたこと自体恐ろしかったし、周りの人も驚いていて本当に恥ずかしかった。その後、隠れて口座に貯めていたお金も知らぬ間に引き落とされていて、母親を信頼できなくなってしまった」
高校を卒業した18歳のタイミングで教会に行かなくなり、家族にも脱会の旨を伝えたというが、その後も苦しみは続いている。
「私の他の兄弟はまだ全員入信している状態で、家族の誰ともわかりあえないというのは本当に不幸だと感じます。母親も年をとり、『なぜお金を渡さないといけなかったのか』と問うても『あの時は本当に申し訳なかった』と繰り返すのですが、脱会の気配はありません。私も対人恐怖症を患い、“親ガチャ”という言葉がつらく胸に突き刺さったままです」