上司の命令に嫌でも従わなければならないとき、怒りを直接相手にぶつけるのではなく、仕事をわざと遅らせるなど、間接的に反抗心を示す人たちがいる。こうした行動のことを「受動的攻撃行動」と呼ぶが、単なる嫌がらせとは違い、業務全体に影響を及ぼしかねない。このタイプの人が職場にいたら、どう対応すればいいのだろうか。リアルケースから専門家のアドバイスを紹介する。
【ケース1】わざと遅刻するサボり魔女!
私がパート長を務めるスーパーマーケットでは、15〜17時が最も忙しい時間帯です。特に16時台は、夕飯の食材を買うお客さまであふれ、品出しやレジ打ちなど、猫の手も借りたいほどの忙しさ。そのため、この時間帯用にと採用したパートも長続きしません。そんな中、
「忙しい時間帯でも入れます」
と、意欲を見せてくれたのが新人パートの裕子(34才)。明るく、いつも笑顔で、
「いい人が入ってくれた」
とパート仲間で喜んでいたのですが……。彼女が仕事を覚えた頃、
「これからはいよいよ、忙しい時間帯の16時から入ってもらうけど、大丈夫?」
と聞くと、
「わかりました、大丈夫です」
との返事。ところが翌日、16時になっても裕子は出勤してこないし、電話にも出ない。仕方がないので、その日はほかのパートに1時間延長してもらいました。何かあったのかと心配していると、裕子は18時に出勤。私が、
「出勤時間を大幅に過ぎているけど、どうしたの?」
と言うと、
「え!? 私の手帳には6時と書いてあります。もしかして16時と18時を間違えていました? 申し訳ありません!」
と、本当に反省している様子で謝るんです。これは本当に間違えたのかと思ってこの日は許しましたが、何と翌日も、その翌々日も同じ理由で18時から出勤。さすがにわざとでしょ。
そういえば、最初に16時から入ってほしいと話を持ち掛けたとき、
「忙しい時間帯でも給料は変わらないんですね」
と一瞬、不満げな顔をしていたっけ。でも、自分で引き受けたのだから、業務を遂行するのが当たり前だと思うんですが……。
この一件で、パート仲間からの裕子の信用はガタ落ち。
「彼女をクビにしてほしい」
という声も上がっていて、頭を悩ませています。(44才・パート)
【精神科医が解説】上っ面の大丈夫に惑わされず、希望を聞き出す
「このケースはコミュケーション不足を感じます。裕子さんのようにどうしても仕事を得たく、その場限りの“できます”を言い張る人は増えています。彼女の希望を聞き出し、“給料を上げられない代わりに16時から働くのは週3回まで”などの妥協点を探るのがおすすめです」(精神科医・井上智介さん)