「社内の与信基準に当てはまらないことを理由に諦めていた新規顧客との契約が、自動の与信審査で可能になったばかりか、請求から入金確認、回収までお任せできる。新たに立ち上げた事業に欠かせない柱の1つになりました」
そう語るのは、オンデマンド印刷を手掛けるキンコーズ・ジャパンの守屋博紀氏(ソリューション営業統括ソリューション推進グループ担当チーム長)。守屋氏が中心となって導入し、新事業の「柱の1つ」とまでなったというのが、企業間請求代行サービス「マネーフォワード ケッサイ」だ。
いま、人事・総務・経理関係の業務をアウトソーシングするBtoBサービスが増えている。その中でマネーフォワード ケッサイは、事業者相手の取引で生じる請求業務を丸ごと引き受ける「企業間請求代行」サービスを展開する。
これまで企業間の請求業務といえば、社内で計上した売り上げを経理担当者が期日までに請求書にまとめ、印刷して請求先ごとに封入して郵送し、入金消し込みをするのが一般的だった。一部でデジタル化が進んでいるとはいえ、アナログ式に「紙」の請求書に頼るケースは多く、請求先が多ければ多いほど、締日の前には担当者が残業を繰り返すことも珍しくはない。
そうした煩雑な作業から社員を解放してくれるのが、マネーフォワード ケッサイなどのクラウド型BtoB請求代行サービスだ。同社ならではの特徴が、冒頭でキンコーズ・ジャパンの守屋氏が述べた与信審査から請求書発行、回収、入金消し込み、未入金時のフォローまでを「一気通貫」で頼める点だという。守屋氏が続ける。
「弊社は2018年に『オンデマンドMPM』という新事業を立ち上げました。これは、お客さまが自社のチラシ、ポスターといった販促物をオンラインでデザイン・管理・発注できるクラウド型サービスです。現在、172社にご利用いただいています。
たとえばフランチャイズ企業様の場合、数千とか数万ある店舗ごとに、キャンペーンポスターやチラシ、価格変更のお知らせなど多種多様な印刷物のニーズがあります。しかし、従来の契約の仕方(社内の与信審査を通すやり方)では、サービスのエンドユーザーである店舗ごとに個別契約を結んでご利用いただく必要があり、現実的ではありませんでした。
そこでこの新事業に企業間請求代行サービスを導入しました。与信審査から回収まで自動で行えるようになり、契約から請求までかなりの業務工程が削減できました。それまでの社内の与信基準なら契約が成立しなかった案件にも対応でき、顧客の幅が大きく広がったと実感しています」
一般的に、企業間での掛け取引では社内の与信審査基準により、設立から日が浅い事業者や個人事業主との新規契約はハードルが高い場合がある。しかし、マネーフォワード ケッサイはその点をクリアしてくれたという。
「これまで、『オンデマンドMPM』でマネーフォワード ケッサイの与信枠審査を利用した際の通過率は100%。システムに取引先名を入力した瞬間に結果が出ることもあります。請求後は入金確認や入金の消し込み、未入金時のフォローまで任せられるうえに、1件当たりの手数料がクレジットカード決済よりも安い。このサービスなくしては、現在の形での『オンデマンドMPM』事業は成り立たないほどです」(同前)
5つのメリットで「一気に業務改善」
キンコーズ・ジャパンの守屋氏が新事業で実感している「業務削減による負担軽減・業務改善」こそ、マネーフォワード ケッサイの強みだ。改めて、同サービスのメリットをまとめてみる。
【メリット1】請求業務の負担が削減できる
請求書発行、入金消し込み(確認)、口座振替などの請求業務が大幅に削減できる。さらに、社内の基幹システムとの連携も可能なので全体の業務効率化が期待できる。請求業務に割いていた時間が7割減となった事例もある。
【メリット2】コスト削減になる
請求業務がデジタルで完結するため、印刷代、紙代、封筒代、郵送費などのコストが「システム利用料」1本に削減できる。入金保証つきのプランの場合、初期費用はゼロで、手数料は委託金額の0.5〜3.5%と、一般的なクレジットカードの手数料より安いケースがほとんどだ。リモートでも利用できるうえ、(電子取引における電子データ保存を定めた)改正電子帳簿保存法にも対応している。
【メリット3】与信サービス利用で顧客の幅が広がる
同社の自動与信審査は「最短数秒」「通過率99%(※1)」。社内の与信審査基準では通らなかった新規の顧客とも取引ができるようになるので、顧客の幅が広がり、事業の成長が期待できる。前述のように、キンコーズ・ジャパンでも、このメリットが大きかったという。
(※1/2022年4〜6月にマネーフォワード ケッサイについて事業者から買い取りを打診された債権のうち同社利用規約違反の疑いのない債権の審査通過率)
【メリット4】「100%入金保証」で売り掛け取引がしやすい
同社による与信審査通過後は、入金が100%保証される(※2)。新規の顧客との取引でもリスクを恐れず売り掛けができ、資金繰りの改善にもつなげることができる。
(※2/表明保証違反が審査通過後に発覚した場合など、例外的な場合は対象外)
【メリット5】インボイス制度にも対応
2023年10月から施行されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)にも対応する(※3)。同サービスの請求書には、仕入税額控除を受けるための書式が用いられる。
(※3/インボイス制度への対応は、2022年中を予定)
請求業務から担当者が解放される
前出の守屋氏は、ゆくゆくはキンコーズ店舗への同サービスの導入も検討したいと話す。
「キンコーズの各店舗における請求業務は、営業担当者による『売り上げの計上』から始まります。これは手作業での入力がメインで、担当者1人あたり月300〜400件に上ることもあります。しかも、オーダー管理、請求書発行など計3つのシステムへの入力作業が必要。
現場はそうした入力作業に忙殺される上、計上に漏れがあれば、請求自体ができません。請求書発行システムを経由して本社経理から請求書を無事に郵送できたとしても、期日までに入金されなければ現場の店舗の担当者による確認作業が必要になります。企業様の印刷物は機密情報が多いこともあり、どんな案件でも細心の注意を払って対応しなければならず、あらゆる業務が煩雑になりがちです。
既存の顧客様、店頭の顧客様に対してマネーフォワード ケッサイが利用できれば、そうした一連の請求業務から現場の担当者が解放されるのではないかと期待しています」
先行き不透明で将来予測が困難なVUCAと呼ばれる時代の中で、企業にとって重要なのは「会社の強み」にリソースを集中することだと言われる。スタートアップやメガベンチャー、新規事業を展開する企業はもちろん、新たな領域での事業を検討する中堅企業・大企業でも、定型業務でありつつもミスが許されない請求業務はアウトソーシングして、自社事業に集中するケースが増えている。
今回取材に協力してくれたキンコーズ・ジャパン以外にも、スタートアップから大手企業まで数多くの企業から「選ばれている」マネーフォワード ケッサイ。将来を見据えた業務改善策の1つとして、また新規事業創出のツールの1つとして、大きな選択肢となるだろう。