観劇やコンサートなどでは、普段は客に見せない舞台裏を特別に公開するバックステージツアーを実施することがある。熱心なファンでなくても、特別に見られると言われると興味をそそられるものだ。このところ鉄道会社で続いている、使われていない路線や駅などの遊休資産を活用する事例について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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2020年初頭から感染が拡大した新型コロナウイルスにより、鉄道各社は苦戦を強いられた。ようやく、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった政府による行動制限されない夏休みを迎える。鉄道事業者や旅行代理店関係者・観光地の宿泊施設・飲食店・土産物店などの期待は高まっていた。しかし、7月下旬にさしかかると連日、一日に10万人を超える新規感染者を記録している。全国一斉の行動制限はないものの、すでに第7波のただ中にあるとみられており、お盆の帰省を見合わせる兆候も出始めている。
夏休みの書き入れ時にも関わらず、鉄道事業者・観光関連事業者からは大きなため息が聞こえてきそうだ。そうした苦しい状況でも、鉄道事業者は工夫を凝らして鉄道需要を創出しようとしている。
「これまでにも秋田港に寄港するクルーズ船の乗船客のために、秋田港駅から秋田駅までの列車を運行したことがあります。しかし、秋田港駅は貨物駅なので、通常なら関係者以外は立ち入ることができません。8月3日、4日に実施する秋田駅から秋田港駅まで企画列車はクルーズ船の利用者以外にも秋田港駅を見学したり、沿線を楽しんでもらうために企画されました」と話すのはJR東日本秋田支社の広報担当者だ。
秋田港駅や秋田港線は、JR東日本が所有する路線・駅ではない。秋田港に荷揚げされた貨物を輸送するための貨物専用駅で、各埠頭から秋田港駅までを秋田臨海鉄道が、秋田港駅から奥羽本線の土崎駅までがJR貨物の路線となっている。
近年はCO2を排出しないことやトラックドライバーの人手不足といった背景から、貨物列車は再評価されている。しかし、全体的な傾向としては貨物列車の需要は決して堅調とは言えない。秋田臨海鉄道は秋田港駅―向浜駅と秋田港駅―秋田北港駅を結ぶ2路線、計7.9キロメートルを保有していたが、トラック輸送に代替できることを理由に2021年3月末で貨物列車の運行事業から撤退した。