原巨人にとって試練の後半戦が始まった。前半戦をまさかの5位で終え、オールスターの中断期間に立て直しを図ろうとした矢先に新型コロナの感染者が続出──後半戦も阪神に2連敗と、まさに泣きっ面に蜂の状況だろう。
ファンにとってはストレスが溜まる試合が続く。12球団ワースト防御率の投手陣の再建、主砲・岡本和真の不調、坂本勇人の後継者育成、このままチームが低迷した場合の原辰徳監督の去就など心配事は尽きないが、それを首脳陣に聞く役割を担う記者は萎縮しているようだ。ある巨人番記者は「ファンからの声は聞こえているが、元木(大介・一軍ヘッド兼オフェンスチーフコーチ)ヘッドとの一件で聞きづらい雰囲気がある」と吐露する。
現在の巨人の取材体制について、キー局野球中継担当が説明する。
「新型コロナが流行してから、巨人は試合後の取材について代表質問制を採っています。一般紙、スポーツ紙、テレビ局などの記者たちが聞きたいことを出し合い、日替わりの代表者が質問する形式です。取材には原監督と元木ヘッド、桑田真澄・一軍投手チーフコーチが対応しますが、選手への取材は試合に勝った場合しか行なわれません。そのため敗戦時は野手のことは元木コーチ、投手のことは桑田コーチに聞くことになっています」
番記者が口にする「元木ヘッドとの一件」は、6月23日のDeNA戦後の取材で起きた。この日は巨人の先発・赤星優志が4回5失点と試合を作れずに敗戦。巨人の目立った活躍といえば今季2度の二軍降格を経て一軍に再昇格した中田翔が代打で登場し、2ランを放ったことだった。中田は二軍降格中、長嶋茂雄終身名誉監督からアドバイスを受けていて、そのミスターが現地観戦する前で本塁打を打つという勝負強さを見せた。
「これまで原監督の中田の起用について、記者の間で疑問の声が上がっていました。中田は5月に二軍降格を命じられたが、復帰後は5試合連続でスタメン起用され、打率3割超、2本塁打と復調を印象付けるような好成績をマークしていた。ところが、それ以降、代打での途中出場が中心になり、調子を崩した中田は再び二軍降格に。中田が代打で実力を発揮する選手でないのはわかっていたはずです。それなのに2度目の再昇格後もスタメンではなく、代打での起用が続いていた。これには記者から『スタメンで使わないならなぜ再昇格させたんだ』『中田の状態に問題があるのか』と様々な声が上がっていた。そのため、この日は記者たちからは中田に関する質問が相次ぎ、代表質問の構成は中田メインになりました」(前出・キー局野球中継担当)
取材に対応した元木コーチは冒頭、相手先発投手を打ち崩せなかったことへの悔しさを滲ませたものの、中田の一発について聞かれると、「逆方向にコンパクトに振れたっていうのは本人にとってもチームにとってもよかった」と賛辞の言葉を口にしたという。しかし、この日で首位ヤクルトとのゲーム差が10ゲームになったことへの苛立ちもあったのか、次の質問も中田だと知るや、一気に態度が変わった。