警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団対策法や暴力団排除条例の施行とともに、あまり足を運べなくなったゴルフ場での思い出と、そこのクラブハウスより旨く作れるというジャージャー麺について。
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「ゴルフ場で食べたのが旨くなくてさ。俺がちゃちゃっと作った方が絶対に旨い」と、元組長は広々としたグリーンを背景に赤と白でコーディネートしたゴルフウェアに身を包み、ゴルフクラブを握っている写真を見せてくれた。自分が作ったほうが絶対に旨いと力説したのは”ジャージャー麺”だ。「そう言ったら、テーブルにいた友人が俺たちも食べたいというから作ってやったら、みんな旨い!ってさ」とニコニコ顔だ。
ところで、ヤクザがゴルフに行って困ることがある。プレイ後に入るお風呂だ。ゴルフ場に限らず、日本では銭湯も温泉もプールでも、刺青をしている人の入浴はお断りが原則だ。アスリートやアーティストがファッションで入れるワンポイントのタトゥーぐらいなら、絆創膏で隠せば入れないこともないだろうが、背中から腰まで彫られた刺青はさすがに隠しようがない。
ひと昔前は、暴力団組織がゴルフ場を貸し切って大掛かりなコンペを開催していた時もあった。ゴルフコンペに誰が参加するのかを確認するため、向かう車のナンバーや顔ぶれをチェックしようと、最寄りの高速道路の料金所付近には早朝から何台もの覆面パトカーが並んでいた。当時はどの組にも所轄の刑事が担当で付いており、組の動向を把握したり、新しい情報を得るため、組長らとお茶を飲んだり、事務所に出入りしていたものだ。
コンペに参加し1ラウンド終えれば、汗をかくので、お風呂に入る。ガラリと引き戸を開けたお風呂場は右を見ても左を見ても、色鮮やかな刺青から渋い筋彫りの刺青まで、それこそ自慢の”紋々”を入れた背中が洗い場にずらりと並んでいた。風呂場でも上下関係はきっちりしており、洗い場に座る場所でその関係がわかる。下の者は上の者の背中を流し、やくざ同士が裸の付き合いをしていた。客人として行けば、上下関係は関係なく、洗い場の空いた所に座るので、運がいいのか悪いのか、タイミングによっては組長の横に並ぶことになり、ゴルフより風呂場の方が緊張することになった。
暴対法に暴排条例ができてからは、それまでのようなコンペの話はまったく聞かなくなった。さらに暴力団関係者の利用禁止をうたっているゴルフ場が現在では大半で、たとえゲストであっても暴力団関係者だということを伏せて利用すると詐欺罪に問われる。「元」がつけばもちろん、現役と違って利用が可能な場面は増えるが、関係者だとみなされて利用が難しいことが少なくない。
ゴルフコースを回れる時には、背中に刺青のあるヤクザは、お風呂に入らず着替えもせず、さっさとゴルフ場を後にする。「ゴルフクラブのメンバーになるのは無理だし、稼業の人間と行くこともないが、、堅気の友人たちに誘われゲストでプレイできることもあるからね。汗をかいても背中が透けて見えないよう、ウェアには気をつけている」という元組長は、なかなかオシャレだ。