悲しみはファッション界のみならず、芸能界にも大きく広がっている。亡くなった世界的ファッションデザイナーの三宅一生さん(みやけ・いっせい、本名・かずなる、享年84)がデザインした服は芸能人にも多くのファンがいた。コラムニストで放送作家の山田美保子さんが三宅さんの服を愛した芸能人たちの秘話について綴る。
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ファッションデザイナーの三宅一生さんが5日に肝細胞がんで亡くなっていたことがわかった。
1971年にスタートしたブランド「イッセイミヤケ」は、ニューヨークでコレクションを発表。1973年には、初めてパリコレに進出し、プレタポルテを発表した。それまでの服作りの概念を覆す「一枚布から服を仕立てる」という発想と技術で、国内はもちろん、世界でも大きな話題となった。なかでも1988年に発表した「プリーツ」を発展させ、1994年の春夏コレクションから単独ブランドとしてスタートし、後に代表作となった「プリーツプリーズ」は、軽くてシワにならず、水洗いもできる機能性と着心地の良さで、大人の女性にファンが多い。「暮らしの中で生きてこそ、デザインの存在価値がある」という三宅一生さんの考えを実現させた同ブランドは、芸能界でも大人気。近年、美輪明宏の衣装は100%、「プリーツプリーズ」だったのではないか。
年末年始号の婦人誌で表紙を務めるときや、一時期、ケータイの待ち受けにすると金運や恋愛運がアップすると言われた画像のイエローゴールドやピンクの衣装は「プリーツプリーズ」。さらには2012年の『NHK紅白歌合戦』で『ヨイトマケの唄』を歌ったときも、上下、黒の「プリーツプリーズ」だった。
文字通り、細かいプリーツが全身に施され、暖色から寒色までの一色使いもあれば、シーズン毎に異なる柄モノも発表された。1本の糸から素材を開発し、縫製した後にプリーツをかける「製品プリーツ」なる手法。デザインも多岐にわたっていたし、インナー、アウター、ワンピース、スカート、パンツからスカーフまで、さまざまなアイテムが揃っているので買い足して、それぞれを合わせてもオシャレに仕上がる。
大人の女性にとって魅力的なのは、プリーツ素材ゆえ、どんな体型をも優しく包み込み、たとえ、ふくよかな身体のラインが出たとしても、エレガントに見せてくれたことだ。そして、くるくる丸めると驚くほどスペースをとらないため、旅先に持参するのにも重宝。華やかな色を選べば、フォーマルなディナー用の服にもなった。
旅番組の出演者やコメンテーターにも
筆者は以前、野際陽子さんと中井美穂がMCを務めた『旅の香り』(テレビ朝日系)の構成を担当していたのだが、その際、“旅人”の女優らがボストンバッグやスーツケースにしのばせていたのも「プリーツプリーズ」だった。組み合わせや重ね着することによって、カジュアルにもドレッシーにもなる「便利な服」と女優たちは口を揃えた。