いい時代だなあとしみじみしています。『イケメン共よ メシを喰え』は、女性が思う存分イケメンを消費する物語です。
マンガが原作で、現在、真夜中ドラマも放送中。「イケメン好き」と叫ぶことは、昨今、多少憚られることはわかっている。それでも、あえて言います。深夜枠のエンタメらしく、くだらなくてちょっぴりフェチで、めちゃくちゃ面白いです。
どんなストーリーかというと、池田好美(ドラマで演じるのは筧美和子) は、ものすごく小食で食べることに興味がない。いつでも食事を完食できないから、プレッシャーと罪悪感がさらに彼女を食事嫌いにさせています。それなのに所属していた編集部でグルメ雑誌を担当することになってしまう。困り果てていた時、好美は発見するのです。イケメンが目の前で夢中になって食べているところを見ると、猛烈に食欲が湧くことを……。
個人的な意見ですが、筆者は、人がものを食べている姿を見るのが苦手です。なんだか動物的で、見ちゃいけないものっていうか。ドラマで好美も、後輩の細見(井上祐貴)がラーメンをむさぼっている姿を目の前にして「えっ、これ見ていいの? 見ていいやつよね?」って言ってます。わかる、すっごいわかります。
それもそのはず、食と性は脳みそでつながっているらしく、ものの食べ方から夜のお作法を想像できるとか、食欲と性欲は脳の同じ部分で感じているとか、ネットには色んな情報があります。デートで食事に行くのも食と性が密接に関係しているかららしいです。
好美はイケメンがハフハフズルズル食べているところを見ると、ズキューンと食欲と性欲が入り交じったものが沸き上がってきます。いやー、これをハッキリ書いちゃうってすごいです。
通常、少女マンガの世界では、イケメンは精神的に消費されます。過去に辛い出来事があって悩みを抱えているとか、逆に主人公の悩みを解決してくれるとか。内面と結びつけたがることが多いんです。ところがこの『イケメン共よ メシを食え』は違う。ガッツリ男性の外見をむさぼり食い、性的に消費します。
これ、20年前なら許されなかったでしょう。女性向けのエッチな媒体、ティーンズラブコミックも、今のように確立されていません。「女性の性は受動的なものであって、自らの意志で取りにいくものではない」という意識が強かったんです。食べものにがっついている男性に女性が食いつくなんて、受け入れられなかったのでは。
かといってこの作品は、10年後にはまた違った捉え方をされているかも。特に女性は美醜で他人に評価されることがままあります。能力が同じレベルでも容姿端麗な女性のほうが有利だったり、逆に「美人は得だ」と言われることは、ものすごい努力をしている美人にとっては不本意かもしれない。少女マンガでも、かわいいヒロインが「中身で私を評価して!」といろんな作品で訴えています。
だから、女性を外見のみで評価する視線には、今の時代とても厳しい。もしこの作品も男女が逆転して「美女を見て性欲にも似た食欲が湧く男性の話」だと、ちょっと時代遅れでバッシングされそうな感じもします。女性への行動の評価の幅も広がってきた今だからこそ、フェチのひとつとして大々的に作品化できるような気がします。
ドラマでは、毎回ゲストにイケメンが登場。そして、ハフハフとご飯を食べるシーンがどアップになるのです。しっとり汗をかいたり、首元を緩めたり腕まくりしたりと、セクシーゾーンを露出しながらの食事。ちょっとスローになったり演出も凝っていて、ムーディな食事シーンになっています。その上、イケメンとの妄想シーンもあるんです。いったいなんのご褒美ですか?