ライフ

【新刊】見開き完結コラム123本、武田砂鉄氏『べつに怒ってない』など4冊

武田砂鉄氏の『べつに怒ってない』

武田砂鉄氏の『べつに怒ってない』など、4冊を紹介

 各地で厳しい暑さが続き、熱中症への警戒が高まっている。こんなときには、涼しい部屋でゆっくり読書でもしていたいところ。この夏に読みたい新刊4冊を紹介する。

『べつに怒ってない』/武田砂鉄/筑摩書房/1760円
見開き完結のコラム123本。他人の誕生祝いに遭遇するレストラン、投票所(体育館)で思いだすマットの耳など。喫茶店でお盆から滑ったナポリタンが背中に垂れても「怒ってどうなる?」と思う著者。気になることは「考え込むようにして」いて、必然的にしたことよりしなかったことを書くほうが多い。そのほうが「頭の中が楽しくいられる」とか。分かるなあ。偏屈党でも作ります?

『掬えば手には』/瀬尾まいこ/講談社/1595円

瀬尾まいこ氏の『掬えば手には』

瀬尾まいこ氏の『掬えば手には』

味は最高、店主の人柄は最低。そんなオムライス専門店でバイトする大学生の梨木匠は昔からある能力を持っていた。人の心の叫びやうめきが分かるのだ。匠は、堅い鎧をまとって現れた女性バイトの常盤さんと打ちとけようとするうち、明るく可愛い女の子の声を聴くようになり……。登場人物達に感じる“好き”が波紋のように広がるノー悪人小説。月明かりの読後感にひたる。

『ロボット・イン・ザ・ホスピタル』/デボラ・インストール著 松原葉子訳/小学館文庫/1089円

デボラ・インストール氏著、松原葉子氏訳の『ロボット・イン・ザ・ホスピタル』

デボラ・インストール氏著、松原葉子氏訳の『ロボット・イン・ザ・ホスピタル』

究極の多様性家族小説。人型ロボットが普及した近未来で、旧い箱型をしたタング。彼が獣医ベン一家の一員になった経緯は1、2作目で胸熱になって頂くとして、このシリーズ5作目では子育て中の“あるある”を描いて国境なき共感を呼ぶ。タングが学校で悪さをする理由、夫妻の娘で自閉症のボニーが表に出るきっかけ。生意気タング、思春期タング。愛が止まらなくなる。

『熱源』/川越宗一/文春文庫/902円

川越宗一氏著の『熱源』

川越宗一氏著の『熱源』

単行本時なんとスケールが大きく誇り高い小説だろうと震えたが、デビュー2作目で直木賞を受賞するとは。エラそうに「選考委員お目が高い」とうなった。日本に同化させられた樺太アイヌのヤヨマネクフ(山辺安之助)。ロシア支配下のポーランド人民族学者ピウスツキ。武力と収奪の20世紀初頭を背景に、2人の軌跡と歴史のうねりを描く。ほとんど史実という驚きも味わって。

文/温水ゆかり

※女性セブン2022年8月18・25日号

関連記事

トピックス

春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン