芸能

朝ドラ『ちむどんどん』の苦境 「脚本チーム制」が裏目に出たか

実は「てびち」(豚足の煮付け)が苦手な黒島結菜

黒島結菜がヒロインを務める

 作品の注目度が高まれば一定のアンチが出現するのは常だが、今回の場合はどう捉えるべきか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * * 
「ツッコむ気もしなくなってきた」「ドラマを見ているより視聴者のネット批評を見る方が楽しい」「NHK史上最低最悪のドラマでは?」(いずれもWEB上の反響コメントより)──残すところ約1ヶ月半。スタート時には想定していなかった結果を生み出しているNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』。

 このドラマをめぐっては、他にも珍しい反応がありました。8月14日、元農林水産副大臣・元参院議員の礒崎陽輔氏がツイッターでこうコメント。

「脚本の論理性が崩壊しています」「私自身沖縄振興の関係者として残念であり、既に手後れかもしれませんがNHKは猛省する必要があります」。これほど直接的なコメントが政治家から放送中のドラマに対して発せられるというのも異例。

 当然ながら注目を集め、「政治家も言論の自由がある」「いや政治家は黙っているべき」「政治家かどうかは別にしても、まったく同感」等さまざまなリアクションがありました。

 そもそもNHK朝ドラとは、何なのか。多くの人にとって「生活・文化的インフラ」的な存在、そんなコラムを私自身、先月書きました。伝えたかった主旨とは「日本で暮らす多くの人々が一般的に共有している感性や慣習、常識に基づいて物語が描かれていくはず……無意識のうちに視聴者はそれを期待している」こと。しかし『ちむどんどん』はインフラの破綻や破壊が目立つゆえ、多くの人々が違和感や不快感を抱かざるをえない。

 もちろん、半年に亘る朝ドラの脚本を書くことはそう簡単ではないでしょう。今回は特に実在のモデルがいるわけではなく、一からのオリジナル。物語を生み出す力も生半可なものでは間に合わない。脚本・羽原大介氏は「全体の構成案が出来上がったのが約2年前」と公式HPで語っていて、少なくとも内容を練る時間はじっくりとあったようです。

 その上での破綻だとすれば……朝ドラの脚本を一人の作家に依存するリスクは大きい、と感じざるをえません。そもそも海外のドラマでは「チーム制」が常識であり、日本のドラマ界にも必要な取り組みではないかと、真剣に思う今日この頃です。

 もちろんNHK自身も危機感を抱いているようで、局内に脚本開発に特化したチーム「WDR(Writer’s Development Room)プロジェクト」を立ち上げる、という記事を見ました。

「海外ではシリーズドラマを制作する際、複数の脚本家が『ライターズルーム』という場に集い、共同執筆することが一般的です。構想段階からメンバーと物語の内容を共有し、アイデアを提供し合う」、「1人で書いていると手詰まりだったことも、違う人のアイデアで乗り越えられることって意外と多い。そうやって、チームで物語の強度を高めていくのがWDRプロジェクトの狙いです」(日刊スポーツ 2022.6.30)と語っているのは、大河ドラマ「真田丸」「鎌倉殿の13人」を担当し、米UCLAで脚本の手法を学んだNHKプロジェクト・ディレクター保坂慶太氏。

 WDR体制で「構想段階からメンバーと物語の内容を共有し、アイデアを提供し合う。構成が得意な人もいれば、せりふが得意な人もいて、そういう才能を掛け合わせながら知恵を出し」ていくことで完成度の高い脚本ができるという。では、今回の朝ドラの脚本はどうやって生まれたのか? もちろんクレジットには羽原大介氏の名前がありますが、驚くことに「チーム制」にかなり近似した方法をすでにとっていたもよう。羽原氏自身こう語っています。

「執筆にあたっては、まず初めに最終週までのプロットを作リました。これを土台に第1週から話の展開やセリフーつ一つを詰めていき、さらに小林さん(制作統括)と木村さん(チーフ演出)と3人で揉んで、また書いては揉んでと、何度も打ち合わせを重ねました。相当な試行錯誤でしたよね」(『連続テレビ小説ちむどんどんPart1 NHKドラマ・ガイド』NHK出版)

関連記事

トピックス

田中圭と15歳年下の永野芽郁が“手つなぎ&お泊まり”報道がSNSで大きな話題に
《不倫報道・2人の距離感》永野芽郁、田中圭は「寝癖がヒドい」…語っていた意味深長な“毎朝のやりとり” 初共演時の親密さに再び注目集まる
NEWSポストセブン
春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン