会社などの定期健診で義務付けられているメニューには、意味のないものもあるという。東海大学名誉教授の大櫛陽一さんが言う。
「40~74才を対象に行われているメタボ健診はその代表格です。そもそも検査は一般的に正常者全体の95%だけが“正常範囲”として使われる決まりになっています。つまり1つの検査項目につき、本来ならば正常と判定されるべき人数の5%が“異常”と判定されているのです。
特にメタボ健診では1項目でも受診者の数十%が異常となるような正常範囲が意図的に設定されており、また検査項目も多いため、本来なら問題がないはずの受診者の約半数が“メタボ”であると判定されています。特に女性は要注意。腹囲はへその高さで測りますが、女性の骨盤は大きいので、男性よりも大きな数値となる傾向があります。メタボと診断されてダイエットすると、かえって死亡率が上がるということがありえる。日本人も欧米人も、BMIは25.0から27.5の“小太りメタボ”が最も健康で寿命が長いのです」
メタボと並んで“国民病”といわれる糖尿病の検査の中にも、受けることで健康を害するものがある。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんは、こう話す。
「『75g経口ブドウ糖負荷試験』はまったく推奨できません。75gの糖質が含まれたブドウ糖液を飲み干し、その30分後、1時間後、2時間後の血糖値とインスリン値の変化を調べる検査ですが、糖分量があまりにも多すぎる。75gの糖質は3g入りスティックシュガー25本分です。一気にこれだけの糖分を摂れば血糖値が急上昇し、体に大きな負担がかかる。糖尿病かどうかを知りたいのなら、血液検査で空腹時血糖値とHbA1c値を調べれば充分です」
ここ最近、新型コロナウイルスの感染増加に伴いPCR検査場は大混雑しているが、医療ジャーナリストの村上和巳さんは断言する。
「基礎疾患がない若年の場合は、感染が疑われてもPCR検査を受ける必要はありません。現状、新型コロナに特効薬はなく、陽性だった場合、基礎疾患のある人には重症化を防ぐために中和抗体薬や抗ウイルス薬が投与されますが、それ以外の人は解熱鎮痛剤をのんで自宅療養するしか対処法がない。むしろ検査を受けるために医療施設に行くことで相手にウイルスをうつしたり、もらったりするリスクもある。一般に、検査を受けるメリットは、“治療が早期にできて、重症化を防げる”こと。基礎疾患がなく、若年でのPCR検査はこれに当てはまりません」
1度であれば有用だが、複数受けると無駄が生じる検査もある。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは言う。
「『骨密度検査』がそれにあたります。アメリカで行われている、各専門医学会が検証のうえ無駄だと考えられる医療の項目を公表する『チュージング・ワイズリー(賢明な選択)』の基準に照らし合わせると、10年に1度で充分とされています。
女性は閉経すると骨粗しょう症のリスクが高くなるため、定期的に骨密度の検査を受ける人も多いのですが、毎年受ける必要はありません。閉経しても急激に骨量が減ることはないですし、放射線被ばくによる健康被害も懸念されます」
※女性セブン2022年9月1日号