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元マトリ部長が語るSNS薬物汚染の実態「私が知る大麻使用例最年少は小学6年生」

スマホ、SNSを使うわが子も危険にさらされている(写真/GettyImages)

スマホ、SNSを使うわが子も危険にさらされている(写真/GettyImages)

 1万4567人。2020年の薬物事犯検挙者数は、過去10年で最多となった。このうち大麻は過去最高の5260人で、うち30才未満は3511人、中高生を含む少年だけでも899人にのぼる。

 急増と若年化の背景にあるのは、ツイッターやインスタグラム、タンブラーなどのSNS。「大麻は自然由来の成分なので、有害ではない」といった誤った情報が広まり、SNS上にはまるでコスメや洋服のように気軽に、違法薬物の広告が日々上がっているのだ。

“普通の子”がクスリに手を出すわけ

 薬物に手を出す若者と聞くと、大人は「半グレ」などの不良少年を思い浮かべるかもしれない。だが、検挙された少年少女らは必ずしもそうではない。元厚生労働省麻薬取締部部長で『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮社)の著者・瀬戸晴海さんが実情を語る。

「“深夜の港やヤクザの事務所で、こわもての大人がこっそりと取引する”というのは、ドラマだけの話。いまや、薬物の取引はコンビニの駐車場や都心のターミナル駅など、衆人環視の中、白昼堂々と行われています。普通の大学生風の青年が“こんちわっす”と現れ、現金と薬物を交換し“またよろしくでーす”と去っていく。わずか十数秒で入手できてしまいます」(瀬戸さん・以下同)

 それを買う側も、ごく普通の子供たちだ。裕福な家庭で育ち、両親にきちんと愛されて育った子も、躊躇なく薬物に手を染めている現状が、そこにはある。

「もはや、あなたのお子さんやお孫さんが薬物乱用者であることさえ、決して驚くべきことではないのです」

 以前なら、違法薬物の入手経路は反社会組織やそれらとつながりのある知人、会員制のクラブなどであることが多かった。だが、いまやそうした危険に足を踏み入れずとも、SNS上にはびこる“暗号”さえ読み解ければ、簡単に入手できる。

「ツイッターで『野菜』『手押し』などと検索すれば、密売情報が山ほど出てきます。前者は『大麻』、後者は『配達、手渡し』を意味する隠語です。大麻に限らず、覚せい剤やMDMA、コカイン、LSDなども隠語で表現され売りさばかれている。入手方法は手渡しのほか、郵送や宅配、営業所留めなどがあり、インターネット通販と同じ感覚で購入することができるのです」

ツイッター上で検索すると、無数の“広告”が出てくる。わが子のスマホに「野菜」「手押し」などの隠語があったら注意してほしい

ツイッター上で検索すると、無数の“広告”が出てくる。わが子のスマホに「野菜」「手押し」などの隠語があったら注意してほしい

 ツイッター上の“広告”に釣られてダイレクトメッセージを送ると、密売人から『テレグラム』や『ウィッカー』といった無料の“秘匿アプリ”に誘導され、具体的な取引が始まる。これらのアプリは通信記録が消去できるため、当局の追跡を困難にするのだ。

 瀬戸さんがかかわった事例では、旅行先でナンパしてきた男子学生にすすめられて大麻にハマった女子大学生や、大麻から覚せい剤に依存し、購入資金を得るために売人になった男子大学生もいる。

「とにかく大麻は価格が安い。5000〜7000円で手に入るので、中高生でも小遣いやお年玉、バイト代で簡単に手を出せる。私が知る使用例の最年少は、小学6年生です。何不自由なく育ち、いじめや虐待といった背景もないような子でも、SNSを介して“大麻を吸うのは悪いことじゃない”という間違った情報を刷り込まれて気軽に購入し、深みにハマっていくのです」

※女性セブン2022年9月1日号

関東信越厚生局麻薬取締部部長などを歴任してきた

関東信越厚生局麻薬取締部部長などを歴任してきた瀬戸晴海さん

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