北朝鮮では、国家非常防疫総括会議が8月10日に開かれ、金正恩・朝鮮労働党総書記が新型コロナウイルス感染症の収束と「勝利」を宣言した。だが、実際には新型コロナの感染拡大により多くの人々が死亡しており、死者の家族は火葬などの葬儀費用を負担できず、死亡届を出さずに、死体を近くの山のなかに埋葬するなどしていることが明らかになった。治安当局は「森林監督官」を新たに任命し、速やかに火葬するよう命令することになっているものの、森林監督官は賄賂をとって私腹を肥やしているのが実態だという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮の国営メディアの発表によると、北朝鮮では477万人以上が発熱したが、そのうち死亡したのは74人とされている。しかし、米ハーバード大学医学部のウィリアム・ハネージ博士が医学関係の学術誌「ランセット」6月に発表した論文によると、「実際の死者数は5万人程度か、それ以上である可能性が高い」と分析している。
北朝鮮の場合、死亡したことすら公的機関に報告されていないこともままあるといわれており、火葬などの葬儀に多額の費用がかかることが理由だという。
ある情報筋がRFAに語ったところでは、北朝鮮北東部に位置する人口230万人の咸鏡北道(日本の県に相当)では、一つしかない火葬場で火葬するのに43万ウォン(約8000円)かかるが、これは50リットルの軽油や120kgのトウモロコシの値段とほぼ同じであるという。
火葬の費用だけでなく、遺体を車で墓地に運ぶにもコストが嵩む。その費用を捻出できない一般住民は、夜中に近くの山や丘に密かに埋葬する。当局に見つからないように、何の目印もつけず、単に土を緩やかな山のようにして、それとなく墓とわかるようになっているという。
当局はこのことを知ると、山などをパトロールする「森林監督官」のグループを結成し取り締まりを強化したが、「森林監督官は墓を見つけると、見逃す代わりに、その家族に5万~10万ウォンの賄賂を要求している」と同筋は明かしている。