健康長寿のために受けたはずの検診や治療などの医療行為が、実は健康に対するリスクになっていた──。そういったケースは少なくないという。では、医療行為で損をしないために、私たちはどう行動すべきなのか。医療ジャーナリストの村上和巳さんが真っ先に取り組むべきとアドバイスするのは、正しい知識をつけることだ。
「まずは“王道”の知識をつけることです。すでに持病がある人は、かかっている病気や標準的な治療法について学ぶこと。糖尿病なら糖尿病学会など、学会のホームページに患者向けの情報が掲載されているのでチェックするといいでしょう。知識をつければ、無駄な医療を防ぎやすくなります」(村上さん)
気軽に相談できる“かかりつけ”をつくることも、不要な医療から身を守ることにつながる。
「高齢になって眠れないと感じたときも、かかりつけ医に相談できれば『高齢になれば仕方がない』などと教えてもらうことができ、無駄な治療を受けずに済みます。
医師が難しければかかりつけの薬剤師でもかまいません。熱が出て病院を受診すべきか迷ったときや、薬ののみ合わせに不安を感じたときなど、薬局に問い合わせれば対応してもらえることが多い。そのためには、処方薬をもらうときはなるべく1つの薬局にまとめて、顔見知りの薬剤師をつくるといいでしょう」(村上さん)
知識をつけ、頼れる味方を見つけた後は、どんな医療を受けるかを自分自身で見極めるべし。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは言う。
「日本は国民皆保険で患者の医療費負担額が少ないため、不必要な治療を施されても抵抗なくそれを受け入れてしまう人が多い。一方、アメリカを中心に海外では、経済的な判断もあり、患者と医師が一緒になって治療方針を決めようとする考えが一般的です。今後は、患者側が主体的に自分の治療を選ぶ姿勢が必要になるでしょう」
東京大学医学部附属病院放射線科特任教授の中川恵一さんも「自分で見定める力を持ってほしい」と助言する。
「過剰に治療が施される事例がある一方、海外に比べてがん検診の受診率が低く、健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する力である『ヘルスリテラシー』が低いことが問題です。40代以上の乳がん検診、子宮頸がんの検診など、受けることで生存率が上がるものもある。必要な検査や治療は個人の健康状態によっても変わってくるので、自分自身の体と向き合って、検査や治療のプラス面とマイナス面を考えてほしい」(中川さん)
自分で取捨選択しようとする姿勢が、無駄と損を遠ざけるのだ。
※女性セブン2022年9月1日号