今ワイドショーで見ない日はないジャーナリストの鈴木エイト氏。旧統一教会の問題を追及し続ける鈴木氏だが、1990年代に「霊感商法」や「合同結婚式」が大きく取り上げられて以降、世間的な注目度は皆無に等しかった。そんななか、なぜ彼は圧力に屈せず闘ってこられたのか。
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ジャーナリストの鈴木エイト氏は、2000年代から実際に信者の勧誘員と接触し、旧統一教会の実態を調査してきた。
「2002年に渋谷駅の南口で偶然、信者が手相の勉強と言って勧誘しているシーンを見たんです。私には一応身内に信者がいてもともと興味があったので、『あ、これが統一教会の勧誘だ』と思って反射的に割って入ったんですが、これが最初のきっかけでした。
勧誘していた信者の話を聞くと、『勧誘の入り口でたとえ嘘をついても、結果として正しい神の道に導いてあげることがその人のためになる』と純粋に信じているんです。単純な詐欺とは違って、巧妙にマインドコントロールされた信者たちが、教会による搾取の被害者になっていた」
個人的に調査を始めてから7年ほどは自身のブログに活動を記す程度だったが、その間に「統一教会と政治家の関係を追及しなければいけない」と思うに至るきっかけとなる出来事があった。
「ある無名の政治家が統一教会に通って、地方教会の青年信者たちを選挙運動にフル活用し、区議選にトップ当選したんです。『選挙応援を手伝った』という青年信者に話を聞いて追及を始めたのですが、その途端にその議員は『全く知らなかった、統一教会だとわかっていたら付き合いませんでした』と態度を翻したんですよ。
完全にどういう団体かわかって利用し、多大な支援を受けていたにもかかわらず、関係を疑われた瞬間に“ポイ捨て”した。大元の組織の意図は別にしても、信者たちは、純粋な思いで選挙応援をしているわけです。教会も悪いが、それをいいように利用する政治家にひどく憤りを感じた」
時給換算で数百円
2009年からジャーナリストとして本格的に取材活動を始めたが、世間からの後押しは皆無といってよかった。
「この10年、継続して報道していたのは僕だけでした。メディアが完全に自主規制をしていて、一般のバラエティ番組であっても“カルト”という言葉すら簡単に使えなかった。実際に統一教会を扱うと、教団側から執拗なクレームが来るから、『面倒な案件には触れないでおこう』という意識は確実にあったでしょう。僕自身が教会側からマークされていたので、雑誌社で記事を書こうとしても『統一教会ネタ、政治家ネタはNG』と言われる媒体も複数ありました。
正直、原稿料などは取材と執筆に費やした時間や労力と比べると微々たるもので、時給換算で数百円程度でした。それでも出してくれたほうだとは思うんですけどね。出版社に何度も届く統一教会からの仮処分申し立てなども頻繁にあり、割のいい仕事とは決して言えませんでした」