アニメは実写と異なり、撮影現場で録ってきた音を使うことができない。効果音は、全て新たに作って入れていくことになる。生活や自然の効果音が随所に細かく盛り込まれた映画『この世界の片隅に』では、どのように創られたのか。映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、音響効果を担当した柴崎憲治氏に話を聞いた。
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――冒頭、舟のギイコギイコという音から入っています。
柴崎:あれも作った音なんです。実際の櫓はあんな音はしませんから。そもそも軋まないですし、グリスを塗れば音はしないんです。ただ、あの音を入れることによって、舟が動いてる感覚が出るんです。主人公の「すず」がそこに乗って動かしてもらっているという、日常の生活があの音一つにもあるわけです。彼女にとっては川を渡って町に行くというのがとても大切な日常なわけですから、音だってそういう風に作っていかないといけないんです。
――実際の櫓は音がしないとすると、あの音はどのように?
柴崎:木と木をすり合わせて櫓の音を出す効果音用の道具が昔からあるんです。ですから、あれは実際に木を使って作っています。
――デジタルが万能と思われがちな時代ですが、アナログの技術が役に立つんですね
柴崎:そうです、アナログです。デジタルで作った音は、しょせんはそれだけの音なんです。生活感のある音は、やっぱり自分が動いて出さないといけません。
それは足音にしても、そうです。すずが歩く時に衣擦れの音がすると思いますが、それも全て人間が同じ動きを全部実際に行ない、その音を録っているんです。それを専門にしているフォーリー・アーティストという人がいます。