「決まり!『ちむどんどん』!」。満面の笑みで、暢子は自らが新規オープンする沖縄料理店の店名を宣言した。4月にスタートした連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)も、残すところあと約1か月。作品のタイトルがどこで登場するかは、朝ドラファンが毎回楽しみにしている見どころの1つだが、8月19日の放送で冒頭のように“回収”された。
黒島結菜(25才)が演じるヒロイン・暢子は、東京・銀座にある老舗レストランでの修業を終えて独立を決意した。物語はクライマックスに向けて動き出している。同作は、沖縄の本土復帰50年を記念して制作された肝いりの作品だ。
しかし、制作陣の熱い思いとは裏腹に、物語が進むにつれ、SNSを中心に作品に対する辛辣な意見が増えていった。中には《朝ドラ史上最悪》といった強烈な意見まであった。矛先は脚本家の羽原大介氏にまで向けられた。ネット上のコメントのなかには、批判を通り越して、誹謗中傷といえるものもあり、視聴者のネットリテラシーが問われる事態にまで発展しているのだ。
どんな作品にもファンがいれば、アンチもいるのが当たり前だ。しかし今回、批判の声ばかりが加速しているのは、ある投稿タグの存在があるようだ。連日、SNSを賑わせているのが《#ちむどんどん反省会》というハッシュタグだ。
「今回の朝ドラの放送以前にも、ドラマや映画の感想をSNSに投稿する際に、《#○○反省会》というタグが使われていました。それが、『ちむどんどん』では、連日トレンド入りするほど投稿が盛んになっているのです」(芸能関係者)
インターネットユーザーの行動を研究する国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一さんが解説する。
「反省会タグをつけることで一体感が生まれ、ある意味でお祭りのような騒ぎになっているのでしょう。タグで検索すると同じように批判的な人がたくさんいるので、『エコーチェンバー』という現象が起こります。こんなにたくさんの人が批判しているのだから、自分の意見も正しいに違いない、どんどん批判しよう、と投稿を重ねます」
20年来の朝ドラファンである50代女性はこう話す。
「友人との世間話のなかで、反省会タグについて聞き、ドラマ視聴後に投稿をチェックするまでが毎朝の習慣になりました。みんなしっかりドラマを見ていて、批判の裏にある朝ドラ愛も感じています。ただ、納得のいく意見も多くある一方、言いすぎなのではと思うものもあります」