今、地上波のゴールデンの時間帯で「昭和」の題材をテーマにした番組が増えている。その背景には、テレビ局のどんな狙いがあるのだろうか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
27日夜、『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)で「昭和アイドルベスト20 SP!!」が放送されます。
その内容は、「昭和に魅了された平均年齢15歳の子どもたちが集結。彼らが昭和アイドルたちの貴重映像を見ながら凄さを語っていく」というもの。当番組で昭和歌謡が扱われるのは3回目であり、2時間30分をかけた放送時間からも力の入った大型特番である様子がうかがえます。
ところで昭和をフィーチャーした特番と言えば、13日に『ダウンタウンVS Z世代 ヤバイ昭和あり?なし?』(日本テレビ系)が放送されたばかり。こちらも同じ土曜ゴールデンタイムの3時間特番でしたが、視聴率は世帯12.5%・個人8.4%を獲得し、同時間帯のダントツでした(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
また、『マツコの知らない世界』(TBS系)でも先月19日に『80年代アイドルスペシャル』が放送されましたし、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)も昭和に公開された『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』を2週連続で放送し、後者は昭和30年代が舞台の物語です。
その他にも、昭和レトロを感じさせる商店街や、街並みを再現した『西武園ゆうえんち』などでのロケ、カラオケ番組で昭和歌謡をピックアップすることも多く、「昭和」がひとつのトレンドになっています。
昭和特集と言えばこれまでは中高年視聴者の多いBS局の定番企画でしたが、なぜ今、地上波のゴールデンタイムで増えているのでしょうか。
子どものブームと大人のノスタルジー
このところ昭和カルチャーは子どもたちの間でブームが続いています。幼児や小学生は『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』『おしりたんてい』などの児童書やアニメで昭和レトロなムードに親しみがあり、それ以上の世代はファッション、音楽、ロケーションなどがブーム。また、彼らの両親や祖父母には昭和カルチャーに親しんできた人が多く、家族3世代での視聴が期待できるコンテンツとみられています。
テレビ局にとって「昭和」のメリットは、家族視聴をうながし、視聴率獲得が期待できるだけではありません。昭和のころは家族そろってテレビを見る生活習慣があっただけに、「昭和を扱った番組を見て、当時のように家族団らんの時間にしてほしい」という思いがあります。個人の趣味嗜好が細分化・多様化してなかなか家族そろって見られるコンテンツが見出せないこともあり、昭和は魅力的なものなのでしょう。
番組を手がける現場のスタッフにとっても、昭和はやりがいのあるコンテンツ。デジタル化が進む今だからこそアナログの良さが際立ちやすく、構成・演出次第でどこか温かさを感じさせたり、クスッと笑いを誘ったりすることができます。
映像面だけを見ても令和とのギャップは大きく、平成生まれの子どもたちにとって昭和は「映える」ものの宝庫。局に眠る豊富なアーカイブから、どの映像を使い、どうつないで引きつけていくのか。クリエイターとしては腕の見せどころであり、最近ではかつて使わなかった粗い映像も「味がある」「面白い」とみなして使用する傾向があるくらいです。