ジャズ調のアップテンポなメロディーに、情熱的な歌声が重なる。2018年に亡くなった西城秀樹さん(享年63)の最後の未発表曲、『終わらない夜』が10月5日に発売される。同曲は2006年に、コンサートのオープニング曲として西城さん監修のもとで制作され、たった1度しか披露されなかった幻の楽曲だ。西城さんのこだわりが詰まった一曲でもあるという。作曲を担当した音楽プロデューサーの宅見将典さんが明かす。
「秀樹さんは、コンサートのオープニング曲にすごくこだわるかたでした。リハーサルではオープニング曲だけを何回も繰り返し、照明や演出などを念入りに確認するほどでした。2006年10月のコンサート前に、秀樹さんから“ジャジー(ジャズっぽい)で大人っぽい曲をオープニングで歌いたい”と依頼されて作ったのが、この曲なんです」
実際、その夜に西城さんがコンサートで『終わらない夜』を熱唱すると、会場は大きな盛り上がりを見せた。しかし、この曲は翌2007年に記録用にレコーディングされただけで、発売には至っていない。
「秀樹さんは当時すでにレジェンドでしたが、2003年に患った脳梗塞もあり、“歌手人生の第2章”を歩まれていました。なので、ヒットする保証のない新曲のリリースにはかなり慎重になっていたんです。秀樹さんは常に前向きな人でしたので、リリースが難しいのなら“次に進もう”ということになった。デモテープは放置されたままでした」(宅見さん・以下同)
西城さんが亡くなった約1年後、宅見さんは当時住んでいた米ロサンゼルスで、西城さんの大ヒット曲『YOUNG MAN(Y.M.C.A.)』(1979年)のジャケット写真に使われた高層ビルを見つけた。ビルを見上げて物思いにふけっていると、ふと『終わらない夜』のことを思い出したという。
「2007年に録音した秀樹さんの声を、世に出したいと考えたんです。バックの演奏は秀樹さんの歌声に合わせて、再収録することにしました。ジャズの本場であるニューヨークのアーティストが賛同してくれたのですが、新型コロナの影響で延期になり、ようやく今年2月にレコーディングを終えました」
付属するDVDには、2006年に披露された『終わらない夜』のコンサート映像も収録されている。まさに西城さんの歌声で「大人っぽい一夜」がよみがえる。
※女性セブン2022年9月8日号