日本ラグビー協会が、昨年6月まで協会の理事を務めていた大阪芸術大客員准教授の谷口真由美氏(47)を「けん責処分」にしたことが明らかになり、騒動となっている。
事の発端は、今年2月に谷口氏が上梓した著書『おっさんの掟』(小学館新書)が協会の“暗部”に触れたことにある。
谷口氏は1月に開幕したラグビー新リーグ「リーグワン」発足に向け、前年まで法人準備室長・審査委員長として中心的な役割を果たしていた。しかし、突如としてラグビー界を追われすべての役職から退任。同書のなかではそこに至る内幕を赤裸々に綴っていた。
ラグビー協会はその内容が秘密保持義務に違反し“情報漏洩”にあたるとして、今月に入って処分を下した。だが、谷口氏はすでに同協会のすべての職を辞している。けん責処分は実質的な意味を持たないが、それでも強行した理由はどこにあったのか。
ラグビー協会に問い合わせたが、「処分はすべて倫理及び処分規程に沿って厳正に対処している。個々の処分案件について、公開情報以上の公表はしておりません」(広報室)と具体的な説明を避けた。谷口氏に真相を聞いた。
「日本ラグビー協会は『情報漏洩だ』と言うが、これは私の認識では内部告発です。協会は公益財団法人として法人税非課税など様々な優遇を得ているにもかかわらず、国民への情報公開を怠り、その内部は深刻なコンプライアンス不全に陥っている。
私の改革プランも様々な形で妨害されてきたが、私には反論の機会が与えられなかった。このままでは真実を葬られると思い、ありのままを書いたんです」
“メンツ”を優先するお偉方
著書のなかで、最もラグビー協会が隠したかった事実だと思われるのが、リーグのディビジョン分け審査における“順位操作”疑惑だ。
「私は審査委員長として地域貢献など様々な指標を加味した公平な審査を行ないました。ところが、最後に協会によってひっくり返された。審査基準が急に変更され、その結果、森重隆会長(当時)主導で強豪・トヨタの順位が繰り上がり、1部リーグとなったのです。著書ではその経緯を詳述しています」(谷口氏)
なぜ、いまになって処分が下されたのか。
「私は処分されても痛くもかゆくもありませんが、協会の偉い方々の“メンツ”のためにやったんでしょう。もし本の内容に間違いがあるなら私を訴えることもできるはず。でもそれが無理筋だとわかっているから、協会の内規で処分してきた。彼らは常に、内輪の論理で動いているのです。今回の処分理由でも、著書の記載内容について『真実ではない』と指摘された箇所は1つもありませんでした」(谷口氏)