加齢とともに生じる身体の老化は止まらない。その影響が顕著に現われるのが膝であり、日常生活に支障をきたすこともしばしばある。
「膝痛の最大の原因は“膝を伸ばす筋肉”の衰えです」と語るのは、1998年の開業以来、膝の治療法を研究してきた戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師だ。
「膝の痛みで悩む患者のほとんどは、軟骨のすり減りによる変形性膝関節症です。膝を伸ばす筋肉は人体で最も老化しやすく、20歳の筋肉量を100とするならば、70歳で40程度まで筋肉量が減る。筋肉の衰えによって膝の軟骨への負荷が大きくなるのです」
だが、膝痛を過度に恐れることはない。
「きちんと対処すれば、9割の患者は手術なしで治せます」(戸田氏)
膝の痛みを改善するカギは体重コントロール、運動、生活習慣の主に3つ。日常生活から膝痛予防を意識して行動すれば、健康寿命を維持できる。
まずは1日の始まりである朝。目覚めとともに膝の曲げ伸ばしを意識したいと我汝会きたひろしま整形外科の原則行院長は言う。
「目が覚めてすぐに動き出すのではなく、布団の中で軽く膝の曲げ伸ばしを10回程度してください。それからゆっくりと横向きになり、床に足をつけて両手でバランスを取りながら起き上がりましょう」
敷き布団派とベッド派に大きく二分されるが、ベッドで寝るほうが膝に優しいようだ。
「ベッドには高さがあり、一段下の床に足をついて両手でサポートすれば、膝に負担を与えることなく起き上がれます。どうしても布団で寝る場合は、近くに椅子や背の低いテーブルなどを置いて、手をついて起き上がれば膝の負担を軽くできる」(原氏)