東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆(22)の勢いが止まらない。本塁打、打点、打率とタイトルレースを独走し、令和初の「三冠王」が射程圏内となっている。
昨季も39本塁打をマークした若き主砲だが、今季はさらなる進化を遂げている。スポーツバイオメカニクスの権威で、中京大学名誉教授の湯浅景元氏に、村上の2019年と今年の打撃フォームを比較・分析してもらった。
「今年は、スイングの始動からインパクトするまでの動きの中で、目線のブレがほとんどありません。通常、打者はスイング途中で目線が下降していきますが、連続写真を元に村上の身長などから算出したところ、プロ2年目は下降幅が約22センチだったのに対し、今季のフォームではわずか2センチとほぼ一定しています。スイング時の軸足の膝の曲がりが少なくなったことで目線の安定につながり、ボールを捉える確実性が増しています」
実は村上本人も、今季の打撃フォームに「土台がはまったような感覚がある」とコメントしている。本人も自覚している感覚の変化が、長打と打率を両立できる今季の打撃につながっているのだろう。
データにも好調ぶりが表われている。昨年と今年のゾーン別打撃成績を比較すると、インコースに強くなっているのだ。
プロ野球トレーナーの高島誠氏も目を見張る。
「徹底したインコース攻めは強打者に対する攻め方のセオリーで、身体を開いたりベースから離れて構えたりすると、今度は外角が弱くなり調子を崩してしまう。ところが、村上は『胸郭』の動かし方が上手く、懐に空間を作り出して、身体に非常に近い位置でバットを振り抜くことができている。いわゆる“インサイドアウト”の技術を高度に実践しているので、厳しい内角攻めを受けても好調を維持できるのでしょう」
22歳、プロ5年目というキャリアを考えれば末恐ろしいばかりだ。村神様はどこまで“神化”するのか。
取材・文/田中周治
※週刊ポスト2022年9月9日号