北朝鮮では、朝鮮労働党指導部が離婚を「反社会主義」とみなしているため、多くの夫婦は離婚が正式に成立するまで何年も待たされていることが分かった。とはいえ、裁判所の職員らに賄賂を渡せば、すぐに受理されるケースもあり、市民たちは「離婚は反社会主義というが、賄賂は犯罪であり、反社会主義ではないのか」などと憤っているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮北東部の咸鏡北道京城郡の市民によると、最近、経済的理由で夫婦間の諍いがたえず、離婚を希望する家庭が増加。裁判所の前には、いつも離婚を求める男女の姿が絶えないのだが、北朝鮮当局は裁判所に対して、簡単には離婚を認めないよう命じているという。
その理由は、離婚は伝統的に社会不安を引き起こす反社会的な行為と認識されており、北朝鮮では夫婦が革命を志向するための「家庭革命」を含む「社会主義的ライフスタイル」を理想としているからだという。
ある党幹部が明らかにしたところでは、市と郡の裁判所が1年間に受理できる離婚件数は人口に応じて上限が決められており、人口約10万6000人の京城郡は今年1年間で40件ほどの離婚しか認められていないというのだ。裁判所が決められた離婚数を超えると、党中央から社会主義理念に反している疑いがあるとして、厳しい調査が行われるため、裁判所はこの規定を守らざるを得ない。
このため、裁判所の裁判官などは離婚希望者からの賄賂の額によって、離婚させるかどうかを決めることになる。
離婚希望者が多いと、裁判所に賄賂を払わなければ、第一段階の書類提出を突破することは不可能で、賄賂を払わなければ、3~5年待っても離婚できない という現実がある。その逆に、多額の賄賂を出せば、すぐに離婚が成立することも少なくない。
ある住民はRFAに「今年離婚した友人は弁護士に6万ウォン(約9000円)を渡して書類を提出し、裁判を担当する裁判官に約20万ウォン(約3万円)の賄賂を払った結果、審理は簡略化され、とんとん拍子に、2週間で離婚が成立した。北朝鮮では、お金がないと離婚できないのが現実だ。離婚が難しいので、若い人は結婚しても婚姻届を出さないことも多い」と語っている。