SNSやインターネットにあふれている情報は玉石混交。無邪気で無防備な子供たちはそこにある情報を簡単に信じ、時にはそれを“世界のすべて”だと思い込んでしまう。スマホ依存防止学会代表の磯村毅さんが言う。
「SNS上の『いいね!』で満たされる承認欲求は、人間の本能の1つ。一度欲求が満たされる体験をしてしまったら、抗うのは難しいでしょう。そうして世界中の人とつながれば、どうしても自分よりルックスや才能で勝る同世代の子供が目に入って自尊心が傷つく。より多くの『いいね!=承認』を求めて、さらにSNSにのめり込んでいく子は少なくありません」
アメリカの心理学者のジェフリー・ヤングによれば、健全に成長するためには、子供の頃に【1】愛される・認められる・わかってもらえる【2】上手にできる【3】自分の気持ちを表現していいと思える【4】自由にのびのび楽しく遊ぶ【5】ルールを守って自分をコントロールできる、の「5つの感情欲求」が満たされ、守られる必要がある。
だが、子供が減っている現代日本では、多くの子供が親や社会の期待を一身に背負い、プレッシャーの中で暮らしている。学校や塾や部活動で自由な時間が限られている子供たちは、LINEスタンプやTwitterの140文字、TikTokの数十秒の動画で手軽な娯楽に夢中になり、Instagramで承認欲求を満たす。
だがそこでも、魅力的なルックスを持つ子や個性的な投稿ができる子、すなわち「バズった人」のみが勝者。たとえ自分の部屋にひとりでいたとしても、スマホで誰かとつながっている時間は、常に自分自身を“盛って”いる。いまの子供たちは、物理的にも精神的にも、がんじがらめになっているのだ。
紙の本を読めば脳がよみがえる
昔は、突飛な行動を取る子や、周囲になじめない子も「ちょっと変わった子」として受け入れられていた。一方、いまは少しでもほかの子と違うと、「発達障害ではないか」と疑われる。だがそもそも“発達障害は悪いもの”“進路に影響が出る”という考えが偏っている。北海道教育大学教育学部教授の片桐正敏さんが言う。
「特別支援学級にいたからといって、受験などで不利に扱われることはありません。その子が本当に発達障害を抱えているなら、合理的配慮も含む適切な支援を受けられるようにすべきです。まれに、幼少期に周囲の支援や理解を得られず成長した人が罪を犯し“鑑定の結果、実は発達障害を抱えていたことがわかった”と報じられることがあります。子供の頃にわかっていれば、孤立を防ぎ、リスクを下げられたはずです」(片桐さん)