エンゼルス・大谷翔平(28)とヤクルト・村上宗隆(22)がもし戦わば……野球ファンならぜひ見てみたい対決ではないだろうか。今季三冠王も射程圏の村上が近い将来、メジャーに挑戦する可能性は十分あり得るだろう。
もし村上がメジャーに移籍して定位置を取れば、投手・大谷vs村上の「夢の対決」が見られるかもしれない。
今季の投手・大谷は11勝8敗で防御率は2.67。投球回128回でリーグ4位の176奪三振と驚異の成績を残している(8月27日終了時点)。
日本球界の最強打者・村上と相対した場合、どちらに軍配が上がるのか──野球評論家・前田幸長氏はこう語る。
「今すぐに対戦すれば、流石に大谷でしょう。日本にも球速のあるピッチャーはいますが、メジャーの投手の平均球速は日本より7~8kmは速いうえに、大谷はそのなかでもトップクラスの直球を持っています。大谷を打つためにはある程度の慣れが必要になるはずです」
大谷は直球だけでなく、落差の大きい140km台のフォークやタイミングを外す緩いカーブなどの変化球も超一級品だ。そのなかでも特に今年は投球全体の40%以上を占めるスライダー系の球種で多く空振りを奪い、勝利を積み上げている。“魔球”とも呼ばれる決め球だ。
野球評論家の江本孟紀氏は「このスライダー系のボールに村上は苦しめられるだろう」と語る。
「面白い対戦になることは間違いない。ですが、大谷は日本のピッチャーには投げられないような横に大きく曲がるスライダーを駆使する。さらには速いスライダー、遅いスライダーと自由自在に操れる。いかに村上でもこれを打つのは大変だと思いますよ。
村上はオールスターで全球直球勝負だった佐々木朗希(20)のボールをはじき返していましたが、速い球と独特の変化をするスライダーで組み立てられたらまず打てない。ましてやセ・リーグだと佐々木のようなピッチャーと対戦する機会さえ限られる。大谷に分があるんじゃないでしょうか」
大谷有利との見方が大勢のなか、大谷はさらに武器を増やしている。8月16日のマリナーズ戦では新球・ツーシームを披露。シュート気味の動く変化球で右打者を詰まらせる場面もあった。
ますます投球に磨きがかかる大谷。村上が打つことはどんどん難しくなりそうだが、元約ヤクルトのエースで1998年に沢村賞を獲得した川崎憲次郎氏はこんな見方を示す。
「村上君も力負けはしないでしょう。どっちに分があるとも言いづらい。ただ、村上君には“右投手は左バッターに対してシンカー系の球を投げれば、引っかけさせて打ち取れる”とのセオリーが通用しないという強みがある。もしかしたら大谷君のシュート気味に曲がるツーシームへは対処できるかもしれませんね」
今季、村上が49本の本塁打のうち32本を右投手から放っているのに対し、大谷は左打者により打たれている。昨年は15被弾のうち、12本が左打者からで、今季も14被弾のうち8本を左打者から浴びている。右投手には左打者のほうが有利というセオリーは、最強レベルの2人についても言えるわけだが、この傾向が実際に対戦した時に当てはまるのかも見ものだ。
日本人頂上決戦が実現する日が、今から楽しみでならない。
※週刊ポスト2022年9月9日号