先代の定年に伴って「宮城野」を継承した元横綱・白鵬。8月2日には宮城野部屋を墨田区東駒形の旧東関部屋の建物へ移転させ、同20日に稽古風景を初めて公開した。
「所属力士が増えて手狭になったというのが表向きの理由だが、“先代からの継承ではなく新たに部屋を立ち上げたのだ”というアピールでしょう。弟子17人のうち12人は白鵬のスカウトした内弟子ですから」(担当記者)
将来は新しい部屋を建てると公言しているが、移転先の旧東関部屋は“外国出身力士の聖地”だ。
「もともとハワイ出身の元関脇・高見山が興した部屋です。外国人初の幕内優勝を果たした先駆者であり、同郷の曙を横綱に育てています」(同前)
一連の動きについて、ある親方は「失脚した貴乃花親方が反面教師なのだろう」とみる。
「貴乃花親方は改革を旗印に若手親方の支持を得て一門まで作ったが、空中分解。関取を育てるまで8年かかるなど弟子育成がうまくいかず、最後は弟子の不祥事で監督不行届きを問われ、協会を追われた。白鵬は現役中から内弟子を抱え、部屋を継承した時点で関取が3人。華々しいお披露目は、貴乃花親方を反面教師にした結果でしょう」
今後注目されるのは「生活拠点」だ。貴乃花親方はかつて中野の部屋に常駐せず、品川の邸宅から“通い”の生活を送り、弟子を監督できていないと批判された。
宮城野部屋の稽古初公開を報じた記事では、〈(白鵬が)部屋に住むのは17年ぶり〉〈建物の4階に師匠として住む〉とあるが、前出・担当記者は「実態としてどうなるかは不透明」と話す。
「旧東関部屋の建物は3階に親方用の部屋がある。ところが、そこには先々代の元・高見山が住んでいるまま。4階は(力士用の)個室だけで、港区のタワーマンションで暮らす白鵬が一家で移るのは難しいはず。稽古公開の代表取材では白鵬サイドから、高見山がまだ生活していることに触れないよう要望があったというくらいですから、白鵬も一家の生活拠点をどうするか、難題として認識しているのでしょう」
現地を訪れると、たしかに〈宮城野部屋〉と書かれたものとは別に、〈渡辺〉と書かれた郵便受けが(元・高見山の本名は渡辺大五郎)。インターホンも2つあり、うち1つの横に〈宮城野部屋 1F、2F、4Fに御用の方はこちら〉と手書きされた紙が貼られていた。
各紙は「一国一城の主となった」と報じたが、真の“一本立ち”はまだ先なのかもしれない。
※週刊ポスト2022年9月9日号