膝の痛みが引かない場合は、早めに医療機関への受診を(イメージ)
日本で膝痛に悩む人は約3000万人といわれており、そのうち9割が軟骨の減少が原因で発症する変形性膝関節症だという。今や国民病となった膝痛だが、朝から夜までの日常生活の至るところに痛みの改善ポイントが隠されている。
一度減った膝の軟骨は元に戻らず、やがて骨と骨が直接ぶつかってさらに強い痛みが襲ってくる。我汝会きたひろしま整形外科の原則行院長が“膝痛の前兆”について解説する。
「パキパキという音は関節内の気泡が弾ける音で、通常は問題ないケースが多いですが、膝を動かした時にミシミシ、ゴリゴリと音がして痛みを伴ったら、変形性膝関節症の可能性が高い」
ここまでに紹介した日常生活の改善策でも痛みが引かない場合は、早めに医療機関を受診するのが良い。
「軽~中程度なら痛み止めや湿布、ヒアルロン酸注射などで対処したり、筋力保持のためのトレーニングやリハビリを行ないます」(原氏)
これらの治療で改善が見込めない場合は、電気治療やハリ治療をすることになるが、最悪の場合は手術することになる。
近年は医療技術が進歩しているという。永振クリニックメディカルセンター院長の陳昌カイ医師が解説する。
「外科手術としては3つ考えられる。まず、関節鏡視下手術です。膝関節の周囲に1cm程度の穴を2~3か所開け、内視鏡の1種である関節鏡を挿入して、すり切れた半月板や軟骨のささくれを除去する方法です。
中等度のO脚がある方には、膝への荷重バランスを矯正する高位脛骨骨切術を施します。
症状が悪い場合は人工膝関節置換術を行なう。手術時間は1~2時間ほどでかなり短縮されました。これは最後の手段で、変形した膝関節を人工関節と入れ替える手法です。
人工関節は感染症に弱く、合併症のリスクがあります。また衝撃にも弱くて運動が難しくなる。やはり変形性膝関節症が悪化する前に、生活習慣の改善や運動で膝痛に備えることが何より大切です」
近年は軟骨を再生できる技術も生まれた。軟骨組織の増殖する能力を利用して、人工的に軟骨細胞を増やす自家培養軟骨という。患者から軟骨細胞の一部を取り出して、コラーゲンの一種と混ぜた後、約1か月培養する。患者の軟骨の性質と同等のものを作ることができる画期的な方法だ。
2012年には国から正式に認可されており、2013年からは保険適用されて手術費用は20万円ほど。手術時間が30分程度と短く、入院も1日で済む。
健康寿命は膝で延びるのだ。
※週刊ポスト2022年9月9日号