国内

池田勇人と宏池会 日本を高度経済成長に導いた「頭脳派集団」の実像

今の派閥とは何が違ったか(写真は1960年の遊説先での池田陣営/共同通信社)

今の“派閥”とは何が違ったか(写真は1960年の遊説先での池田陣営/共同通信社)

 時は1960年代──。前任の岸信介政権下での安保闘争で揺れる日本を「経済大国」へと押し上げたのが、総理大臣・池田勇人が率いる宏池会であった。その姿は令和の時代の“派閥”とは全く異なる。屈指のブレーンたちが集った最強政策集団の実像とは──。【前後編の前編】(文中一部敬称略)

 * * *
 岸田文雄・首相が率いる「宏池会」(岸田派)は自民党の保守本流と呼ばれる。創設者は池田勇人。「所得倍増計画」で日本の高度経済成長の礎を築いたことで知られる昭和の名宰相の1人だ。

 奇しくも、岸田氏の首相在任中に安倍晋三・元首相銃殺事件が起きたのと同様に、池田は総理大臣として浅沼稲次郎・日本社会党委員長刺殺事件という重大な政治テロ事件に直面した。だが、2人の取った対応は対照的だった。

 安倍氏の銃殺事件後に岸田内閣の支持率が急落しているのに対し、池田は事件処理に鮮やかな手腕を見せ、発足したばかりだった政権を安定軌道に乗せた。それを支えたのが池田のもとに集まった宏池会創成期の多彩な人材たちだ。

 池田が首相に就任した1960年は、前任の岸信介が進めた日米安保条約改定への反対運動の余燼がくすぶり、日本社会全体が左右対立で騒然としていた時代だ。

 総選挙を1か月後にひかえたその年の10月12日、「自民党苦戦」が伝えられる情勢のなか、日比谷公会堂で開かれた3党首立会演説会で社会党の浅沼委員長が右翼少年に刺される事件が起きた。池田もその場に同席していた。

 事件の一報を受けると、官邸は即座に動いた。池田の番記者を務め、浅沼事件の目撃者でもある山岸一平・元日本経済新聞専務の証言だ。

「午後3時に私の目の前で浅沼さんが刺された。病院に運ばれたが死亡が伝わると、ただちに自民党本部に日の丸と自民党旗に黒いリボンをつけた弔旗が翻った。当時は参院議員だった宮沢喜一さんが指示したものだ。

 そしてすぐに官房長官の大平正芳さん、前尾繁三郎さん(当時は自民党経理局長)、宮沢さんら池田側近が集まり、警視総監と警察庁長官を処分する方針を話し合ったが、警視総監は東京都知事、警察庁長官は国家公安委員会に任命権があるから内閣の判断では辞めさせられない。そこで、治安の最高責任者である山崎巌・自治大臣兼国家公安委員長を辞任させると決めた。浅沼さんが死んでわずか数時間後のことです」

 治安の最高責任者に即、責任を取らせたのだ。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン