映画『トップガン マーヴェリック』(以下、“マーヴェリック”)の快進撃が止まらない。5月27日に日本で公開してから3か月以上経ったいまも映画ランキングトップ10に入り、国内の興行収入は110億円を超えている。映画館に何回も足を運ぶ熱狂的なリピーターも続出し、彼らを称した“追いトップガン”なる言葉も誕生。連日マスコミをにぎわせている。これほどまでに人々に愛され続けている理由とは──。
映画の公開直後から、SNSやネットの口コミなどには「前作を超える続編」「冒頭から涙腺崩壊」「年を取ったトム・クルーズがとにかくカッコいい」などの言葉が飛び交い、配信サービスで『トップガン』(1986年公開)を見直す人も続出。ネットフリックスでは、同作が“マーヴェリック”の公開前から視聴ランキングのトップ10の常連になっているという。
前作からのファンだという木村拓哉(49才)も、自身のラジオ番組『木村拓哉 Flow supported by GYAO!』で、“マーヴェリック”を見た感想を、
「わりと男性の方が作品を見て涙しているという声を多く見かけるんですけど、いやぁ、ぼくもきましたね。2か所で確実に。ぼくは見ながら(涙を)拭っていましたね」
と語っていたが、中高年を中心に、いまなお映画館に足を運ぶ人も後を絶たない。
その人気を、早稲田大学政治経済学部客員教授の谷川建司さんはこう分析する。
「私はトム・クルーズと同じ年の60才なのですが、この世代は、1980年代バブルの好景気を知って、まさにイケイケどんどんでした。ところがいまは不景気の上、デジタル化が進み、コンピューターに仕事を奪われ、すっかり自信を失くしてしまっていますし、若い世代からも年上で経験があるからといって尊敬されるわけではない。でもマーヴェリックは、上官から『管理職になれ』と言われても、それを拒み、出世コースから外れようとも、現役を続けることにこだわる。
そして、自らの経験とその腕前で最終的には若い世代から尊敬の念を抱かれる。それこそが、いま、不景気やコロナ禍の影響で、端に追いやられてしまっている中高年にはカタルシスとなり、胸に迫るものがあったのではないでしょうか」(谷川さん)
また、「ストーリーがいたってシンプルでわかりやすいところも同作のよさ」と言うのは、映画YouTuberの守鍬刈雄さんだ。
「小難しいストーリーはなく、かっこいいトム・クルーズ、戦闘機、迫力ある操縦が体感できるアクション映画。社会が抱えている複雑な問題などは描かれておらず、いわば何も考えなくても最後まで飽きずに気楽に見られる。それこそが、自粛生活や戦争など暗いニュースが多いいま、待ち望まれたものだったのかな、と思います」(守鍬さん)