旧統一教会が全国で開催している一般向けイベントには、教団関連とはわかりにくいものが多く紛れ込んでいるという。安倍晋三・元首相の銃撃事件後、こうしたイベントを後援していた各地の自治体で後援を取り消す動きが広がっている。イベントはコロナ対応に苦労する医療関係者を対象にしたものや、子供に向けたものまでさまざまだ。
学生に対する勧誘の舞台になっているのが、「College Summit for Peace」というイベントだ。
学生や教員がSDGsをテーマに議論する催しで、各地の大学で開催されているが、旧統一教会に関連のある催しであることは知られていない。
ジャーナリストの鈴木エイト氏が指摘する。
「カレッジサミットの創立者などを辿っていくと原理研究会(CARP)メンバーに行き当たり、各地で開催されるカレッジサミットも原理研や世界平和青年学生連合の人物が中心的に関わっていることがわかりました。九州で行なわれたカレッジサミットの代表者は、ユナイト熊本(UNITE KUMAMOTO)の代表者で、統一教会関連の組織であることは明らかです」
大学生遊説隊ユナイトは、安倍政権が推進した安保法制に国民の批判が高まった2016年に旧統一教会の2世信者の東大生4人が結成した組織で、「安保法制賛成」や「安倍政権支持」を掲げて全国でデモや街宣活動を展開していた。
現在は「勝共ユナイト」と名称変更し、旧統一教会の関連団体「国際勝共連合」の学生組織的性格を強めている団体である。
旧統一教会は、教義と一見関係のない「SDGs」などの主張をなぜ掲げるのか。全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮弁護士はその狙いをこう説明する。
「教団はやはり若者を多く取り込みたい。若者がいると団体の行動は説得力と大きな突破力を持つからです。勧誘の対象になるのは、真面目で将来について悩み、疑問を感じている、大学に入ったけれどやりたいことが見つからないといった学生です。教団はそうした若者を引き込むのに、時代ごとに訴求力を持つテーマを掲げてきた。
昔の真面目な学生は『反共』に興味があったが、現在は『SDGs』のほうが時勢に合っているし、学生の興味を引きやすいと学んでいるのでしょう。青年の統一教会員はとにかく真面目で、ボランティアも一生懸命やる。そうした姿に感銘を受ける、使命感の強い人がハマっていく」
イベント後援の取り消しが相次ぐ各自治体の対応や、教会側が関連団体を“隠れ蓑”として利用しているという指摘について、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の広報部に聞くと、「非常に残念に思います」との回答だった。
教団は美しいスローガンで、今なお大学生から小学生までその手を伸ばしている。
※週刊ポスト2022年9月16・23日号