大相撲9月場所の番付が発表され、先場所は「西三段目22枚目」で全勝優勝したかつての大関・朝乃山が「東幕下15枚目」に昇進した。
コロナ禍でのキャバクラ通いが発覚し、6場所出場停止となって番付を大きく下げたが、“再出発”した後、協会の期待は大きいようだ。「幕下15枚目」という番付には大きな意味がある。
「幕下15枚目以内での全勝は優先的に十両へ昇進できる内規があるんです。つまり、今場所が7戦全勝ならわずか2場所での関取復帰となる。関取に戻るには3場所とも言われていたのでスピード出世の流れに乗ったと言えます」(担当記者)
基本的に幕下は60枚目まで。今回の朝乃山は「67枚」番付を上げたわけだ。若手親方が言う。
「周囲の力士の成績も関係する番付の上げ下げは“生き物”で明確なルールはないが、一般的に三段目力士の全勝優勝では60~70枚の昇進になる」
ただ、昨年の9月場所で今回の朝乃山とほぼ同じ東三段目21枚目で全勝優勝した藤島部屋の藤青雲は、64枚の昇進で西幕下17枚目に止められた。
「実業団から転身した期待の星で、“幕下できちんと修業させよう”という考えから、1場所で通過できない番付に置かれたとされる。その意味では、審判部はどんどん朝乃山を昇進させる考えなのでしょう。出場停止処分を受けていた力士に対して適切な扱いなのかわかりませんが」(同前)
そこには協会側の思惑も透けて見える。先場所は朝乃山が花道から土俵に向かうと大きな拍手が湧き、勝つと館内はさらに盛大な拍手に包まれた。
「協会は朝乃山人気を再認識した。1場所でも早く関取に復帰して、大関に再昇進してもらいたいのでしょう。カド番を繰り返す不甲斐ない大関陣では、いつ空席になるかわかりませんから」(前出・担当記者)
ただ、シナリオ通りに進むかはわからない。今場所は幕下15枚目付け出しで「白鵬の秘密兵器」と呼ばれる宮城野部屋の新弟子がデビューする。
「白鵬が自らスカウトした日大出身の川副圭太です。166cmの小兵ながら昨年の学生横綱。小兵の指導に実績のある白鵬が見込んだだけに、実力は確かでしょう。対戦があれば、1敗するだけで幕下を1場所では通過できない朝乃山の一番の難敵となるのでは」(同前)
周囲の思惑通り全勝となるのか。本場所は9月11日に初日を迎える。
※週刊ポスト2022年9月16・23日号