中国では第20回中国共産党代表大会(党大会)を10月に控えるなか、3人の古参党員が特定の指導者に対する個人崇拝や権力の集中を止めなければならないなどとの文書を発表し、インターネット上に出回っている。党大会で異例の3期目を目指す習近平国家を暗に批判しているものと見られるが、これに対して、中国当局は批判拡大に警戒を強めているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
3人の古参党員は河北省邯鄲市に住む馬桂冠氏と董紅儀氏、田其荘氏で、3人とも党員歴はほぼ40年だ。
文書は党大会への提案として8月22日付で書かれている。中国の人権問題を論じる「維権網」が25日に報じたところによると、文書では党規約には「個人崇拝の禁止」が明記されているが、「陰謀家の野心を防ぐ手だてはなく、真に禁止するなら制裁や罰則が必要だ」と指摘したうえで、「さもないと文化大革命の悲劇を繰り返すことになる」などと指摘している。
この文書について、馬氏はRFAの取材に対して、「文書を書いたのは、昔からの親友でもあるわれわれ3人だが、その文書を公開したわけではなく、どのようにネット上に流れたのかは分からない。自発的に発表したわけではない」と語り、文書がどのような経路をとって発表されたかについて知らないとも述べているという。
馬氏は76歳で、大学卒業後、鉄道局などに勤め、1984年に入党したという。RFAは他の2人にも取材を試みたが接触できなかった。
馬氏は2人の行方について、「どこに行ったかは分からないが、党員には当局を批判する権利がある。党と中国を思ってのことだからだ。しかし、時には例外もあるかもしれない」と語ったうえで、田氏が今年4月、「広西自治区党委書記の劉寧氏が個人崇拝を行っている」と党中央規律検査委員会に報告したことがあり、河北省当局が田氏の身柄を拘束したことがあることを明らかにしている。
RFAは「3人は当局による監視下にあり、いつ身に危険が及んでも不思議ではない」と指摘している。