含みのある笑顔、意図が読めない口ぶり──NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で三浦義村役を演じる山本耕史(45)が話題だ。主役を食うほどの独特な存在感はどこから来るのか。関係者が語った。【全3回の第1回】
「鎌倉を火の海にし、北条の者どもの首をはねる」
幕府から追放されて怒り狂う源頼家(金子大地)に、「華々しく散るのも悪くないかもしれません。おやりなさい」とけしかけておきながら、いざ頼家に助力を頼まれると、「お断わりします」とアッサリ拒否する。
『鎌倉殿の13人』で、権力闘争の裏で暗躍するキーマン、三浦義村を演じる山本耕史。
したたかで計算高く、何を考えているのかわからない。主人公の北条義時(小栗旬)の盟友だが、本当は味方なのか敵なのかも定かではないという難役である。
同ドラマで義村の父親・三浦義澄を演じる佐藤B作が語る。
「義時のために一生懸命働いているように見えながら、その先を考えているような、野心があるような演じ方をしています。彼は現場には台本を持ってこないんです。台詞を全部頭に入れて、自分の芝居を計算し、きちっと作ってから現場に入る。殺陣もうまいし。ちょっと木刀を持っているシーンがあると、ササッと形を作って、自分でフリを考えてやってます。それが憎たらしいほど見事なんだよ(笑)」
劇中では八重(新垣結衣)が息子を助けるために川に入るシーンで、八重を追って川に来た山本が上半身裸に。その肉体美が話題になった。
「腰の下までの川に入るのに、なぜか上着を脱ぐんですよ。山本くんが三谷幸喜さんに聞いたら、“一瞬ガッキーから見ている者の視線を外したかった”と言っていたみたい。それで彼の肉体が必要だったんだね。三谷さんの狙い通りのシーンになった。
深いところまで脚本を読み込んでくるし、リハーサルの段階でもう演技ができ上がっているから、非の打ちどころがない。実によくできた“息子”ですよ(笑)」(佐藤)
山本といえば、三谷脚本の大河ドラマに皆勤賞で出演。『新選組!』(2004年)では土方歳三、『真田丸』(2016年)では石田三成と、重要な役柄を演じてきた。時代劇評論家のペリー荻野氏が語る。
「『新選組!』の土方歳三は主役の香取慎吾演じる近藤勇を押し退けるほどの存在感がありました。共通しているのは腹の内がわからない、得体の知れない人物であり、かつ物語のキーマンであることです。
主役はブレてはいけないし、飛び道具みたいなことはさせられない。でも主役に準ずるポジションなら『何をするかわからない』という面白い役柄が作れる。作品の出来を左右する重要な役で活きるのが山本さんです。三谷さんは役者を想定して脚本を書く“当て書き”をすると言われていますが、山本さんなら脚本の意図をくみ取り、しっかり演じてくれるという信頼感を感じます。『鎌倉殿』の三浦義村もまさにそんな役どころで、一筋縄ではいかないキャラクターです」