「ほっちゃん」の愛称で知られる声優・堀江由衣。『シスター・プリンセス』の咲耶、『ラブひな』の成瀬川なる、『D.C. 〜ダ・カーポ〜』の白河ことり、『ひぐらしのなく頃に』シリーズの羽入、『とらドラ!』シリーズの櫛枝実乃梨など、彼女が演じた数々のヒロインに恋をしたファンも多いのではないだろうか。声優だけでなくアーティストとしても活動する彼女は、8月7日に新曲『秘密の庭のふたり』をデジタルリリース。さらに同日、今年4~5月に行なわれた約3年ぶりのライブツアー『堀江由衣 LIVE TOUR 2022 文学少女倶楽部II~放課後リピート~』のライブ音源も配信されている。
堀江のライブを知る人は彼女のライブについて「エンターテイメントとしての質が高い」と口を揃えて言う。まずはそのライブの魅力について探っていきたい。
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堀江のライブの知名度を一躍押し上げたのが2006年から始まったライブツアー『堀江由衣をめぐる冒険』シリーズだ。彼女はライブを“ひとつの物語”に仕立て上げ、“堀江由衣”というキャラクターが物語に合わせて歌を披露するという、まるで1本のアニメ映画を見ているかのようなライブ手法を生み出したのである。堀江は当時を振り返りながら教えてくれた。
「物語仕立てのライブを始めたのは少し消極的な理由です。声優である私は歌もできないし、ダンスもできない。じゃあ、そんな私に何ができるんだろうって考えた時、演技や声を含めた総合力だったら、お客さんに楽しんでもらうことができるかもしれないと思ったんです。ネガティブな言い方をすると、歌やダンスからみんなの気を逸らしたかったんです。そこに物語という縦軸があると2時間もあるライブでも飽きずに見てもらえると考えました」
消極的な理由──堀江はそう語るが物語仕立てのライブにすることには、彼女にとっての大きな理由があった。
「ライブの楽曲の選び方ってなかなか難しくて、どうしても人気のある曲か、最新の曲に偏ってしまうんです。もちろんそれでもいいのかもしれませんが、昔の曲や皆さんの思い入れが少ない曲でも、魅せ方ひとつでみんなの思い出に残る曲になると思ったんです。ライブに物語の要素を入れたことで自然とそれができたのは良かったです」
事実、堀江のファンからは「もう生で聞くことはできないだろうなと思っていたデビュー時期のマイナー曲でも、ほっちゃんはライブで歌ってくれる。こういったサプライズもライブの魅力なんです」という声も聞こえる。彼女の思いはしっかりとファンに届いているようだ。