歌手生活61年目にして、年内でコンサート活動からの引退を表明している加山雄三(85才)が9月9日、最後のホールコンサートを開催した。会場には「若大将」の勇姿を見届けようと、約5000人のファンが集結。芸能界からも、和田アキ子(72才)や竹内まりや(67才)、小倉智昭(75才)らが駆けつけた。
当日は、全国62か所の映画館などでの「ライブビューイング」も行われ、約1万3000人が視聴。観客のひとりは、「予想を上回る熱唱でした」と興奮気味に話す。
「MCで言葉が出にくそうにしていて少し心配しましたが、いざ歌うとなると様変わり。前半は海の歌を中心に9曲、休憩を挟んだ後半は『君といつまでも』『サライ』など18曲、全部で27曲を歌いきりました。あの伸びのある声は健在でした」
後半にはサプライズ演出も組み込まれた。
「後半が始まってすぐに流れた映像の若大将に、少し違和感を覚えました。よく見たら、“バーチャル若大将”だったんです。本人とバーチャルがデュエットする演出でした」(前出・観客)
人工知能(AI)で加山の声と姿を再現したもので、加山本人は「昔から誰もやったことがないことをやるのが好きなんだよね」と、紹介していたという。
終始イスに座りながらも、力強い歌声と晴れやかな笑顔を見せていた加山に、客席から一際温かい視線を向けていたのは、妻で元女優の松本めぐみさん(75才)だった。コンサートが最高潮の盛り上がりを見せたのは、加山が『September 4th』を披露したときだった。音楽関係者が明かす。
「その歌は、加山さんとめぐみさんの結婚記念日である9月4日への思いが込められた一曲なんです。
コンサートで加山さんは“お母ちゃんのために、どうしても歌いたい”と、その歌を客席のめぐみさんに捧げました。歌唱中、会場の大型スクリーンにめぐみさんが映し出されました。時間にしてたった2秒ほどでしたが、いっぱいの涙を浮かべていて、めぐみさんにとっては最高のサプライズだったと思います。その姿を見た観客も思わずもらい泣きしそうになっていました」
1杯の卵かけご飯を夫婦で分け合った
1970年に結婚した加山とめぐみさんは、その後4人の子供に恵まれた。いまでは孫も4人いるが、これまでの夫婦の道のりには艱難辛苦があった。
「若大将シリーズ」が大ヒットし、スターの座に上り詰めた加山だったが、結婚後間もなく叔父が経営する神奈川・茅ヶ崎のホテルが倒産し、連帯保証人として20億円以上の借金を背負った。40代のときに完済したが、今度はバブル末期に100億円の総工費をかけて開業した新潟県湯沢町の「加山キャプテンコーストスキー場」が大赤字を出し、2011年7月に閉鎖を余儀なくされた。
「多額の借金を背負いました。それでも完済できたのは、加山さんが必死で働いたのはもちろんですが、めぐみさんの支えも大きかった。1杯の卵かけご飯を夫婦で分け合っていた時期もあったそうです」(芸能関係者)
さらには、病魔が加山を襲った。2019年11月に軽度の脳梗塞で入院。翌2020年8月には小脳出血で救急搬送された。
「命に別状はなかったものの、はじめは寝たきりの状態。言葉が出づらくなり、ろれつが回らないという症状もあって、歌い手としては絶望的な状態に陥りました」(前出・芸能関係者)