ここ最近は韓国ドラマが注目されることが多いが、日本にも名作ドラマはたくさんある。配信動画がなかった時代には、放送翌日に友達とその話題で盛り上がり、翌週の放送日が待ち遠しくて仕方なかった……ということが当たり前だった。
時代劇研究家のペリー荻野さんは、「良質なドラマは時代を超えても、色あせないどころか、新たな見方ができる」と言う。
「時代劇は、同じ題材でもドラマ化する時代や脚本家の解釈によって、まったく見方が変わります。
たとえば、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康は、何十回とドラマ化されていますが、同じような描き方をした作品はない。だからこそ、毎回『こういう側面もあったのか』という気づきがあり、若い頃に見たときにはわからなかったことも、大人になると共感できるようになる。そこに、名作ドラマを見る醍醐味があると思います」(ペリーさん)
そこで、ペリーさんに、いまだからこそより楽しめる名作時代劇を紹介してもらった。
「地獄で会おうぜ」(石川五右衛門)
大河ドラマ『黄金の日日』第46話(1978年/NHK)
【あらすじ】
大河ドラマ第16作。戦国時代、自治都市・堺とルソン(フィリピン)の交易を開いた商人・呂宋助左衛門の目線で戦乱の世を捉えた。原作は城山三郎さん、主演は六代目・市川染五郎(当時36才、現・松本白鸚)。
【ココで見られる】
『大河ドラマ黄金の日日 完全版』DVD—BOX 第壱集(7枚組)、第弐集(6枚組)各1万9800円 NHKエンタープライズファミリー倶楽部 (C)2003 NHK、NHKオンデマンド配信中。
「私が見てほしいのは、根津甚八さんが演じる石川五右衛門です。物語では、商人の呂宋助左衛門(るそんすけざえもん)とともに貿易をするため、ルソン島(現・フィリピン)を目指そうとするのですが、戦国時代のこと。暴君となった秀吉に苦しめられる民を捨て置けず、命を捨てる覚悟で仲間とともに秀吉の成敗に伏見城に乗り込みます。
そのとき、五右衛門が仲間に向けて放った言葉が『地獄で会おうぜ』。これが、しびれるほどかっこいいんです! その襲撃は失敗に終わり、五右衛門は釜茹での刑にかけられてしまいます。
大人になって見ると、五右衛門には彼なりの正義があって、権力に抗おうと命をかけて立ち向かう姿に共感できるんですね。
脚本は『傷だらけの天使』(1974年/日本テレビ系)などを手がけた市川森一さん。市川さんは被爆地・長崎出身ということもあり、権力者に対して『それでいいのか』と問いかける作品が多くて毎回考えさせられます」(ペリーさん)
【プロフィール】
ペリー荻野さん/時代劇、テレビ番組に関する記事、コラムを新聞、雑誌、ウエブで執筆。現在、NHKラジオ第1『マイあさ!』土曜日に出演中。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2022年9月29・10月6日号