国際情報

香港で“ヒツジがオオカミから村を守る絵本”の発行人らに有罪判決の波紋

絵本の発行人に有罪判決を下した理由は?

絵本の発行人に有罪判決を下した理由は?

 香港の裁判所が9月7日、ヒツジ村のヒツジがオオカミから村を守るというストーリーの絵本について「反政府的な意図が明白だ」などとして、絵本の発行人ら5人に有罪判決を下したことが大きな話題になっている。裁判官はヒツジ村が香港で、オオカミが中国という前提で判決を下したとみられるが、ネット上では「オオカミとヒツジの物語は多くの絵本の題材になっており、絵本に政治的な意図を勘繰るのはいき過ぎだ」などと判決に批判的な意見が出ている。BBCなどが報じた。

 この絵本は香港言語治療師総工会(労働組合)の創設メンバー5人が電子書籍として発行した「ヒツジ村」絵本シリーズの1冊。

 絵本は、村を占領しようとするオオカミにヒツジたちが反撃するという内容で、オオカミたちは汚らしく病気を抱えているという設定で描かれている。

 香港の一部親中派勢力は「この絵本の内容は、香港の民主化運動を子供たちに伝えるものだ」などと指摘し、発行元の同総工会所属の言語療法士の楊逸意氏ら5人を香港の法律に違反していると当局に訴えたという。

 5人は7月初旬に起訴され、2か月に及ぶ裁判の結果、郭偉健判事は「扇動的な意図は、子供の心に禁じられた効果を与えようとする言葉から生じている。この本の幼い読者は、中国当局が香港の住民の生活を破壊する『邪悪な意図』を持って香港にきていると信じ込まされるだろう」などと有罪の判決を下した。

 人権保護団体アムネスティ・インターナショナルのグウェン・リー氏はBBCに対して、「今日の香港では、オオカミとヒツジの絵が描かれた児童書を出版すると刑務所に入れられる可能性がある。このような有罪判決は、香港における人権の崩壊を示す不条理な例だ」と指摘した。

 香港では、中国政府が2020年に香港国家安全維持法(国安法)を制定して以来、民主化運動など反中国的な市民の活動への弾圧が強化されている。だが、BBCによると、今回の裁判で有罪を言い渡された5人は国安法ではなく、イギリス植民地時代からある治安妨害行為を禁じた法律が適用された。この法律の判例はこれまでほとんどなく、「国安法隠し」との声も出ている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン