「治療のため」「予防のため」「健康のため」──年齢を重ねるうちに、どうしても薬をのむ頻度は多くなりがちだが、薬には相性が悪いものがある。場合によっては健康被害をもたらしかねない。そこで、やってはいけない「薬×サプリメント」の“のみ合わせ”を紹介する。
コロナ禍で健康意識が高まり、ついサプリメントに頼りたくなる気持ちも理解できる。ただし、摂り方によっては逆効果になることがあるのを覚えておきたい。都内に住む丸山静子さん(仮名・77才)は物忘れの改善にと、夫婦で青魚のサプリメントをのみ始めた。
「ところが、しばらくすると夫が『なんだか脈が飛ぶ感じがする』と訴えて病院に行くことに。すると医師から、夫は脂質異常症の持病があって、その薬とののみ合わせで不整脈になったようだと説明されました」(丸山さん)
丸山さんの夫は、青魚のサプリメントに含まれる成分のEPAが脂質異常症治療薬の成分と重なり、過剰摂取になったことが原因だったというのだ。
これ以外にも、サプリメントと薬との併用で健康被害が起きることは多々ある。薬剤師の三上彰貴子さんは「カルシウムのサプリメントには要注意」と言う。
「骨粗しょう症の治療薬として活性型ビタミンD3製剤を処方されている人は、サプリメントでカルシウムを摂ってはいけません。高カルシウム血症に陥る可能性が高く、だるさや眠気、食欲不振、吐き気のほか、最悪の場合、不整脈から心不全を起こすこともありえます」
冒頭の丸山さんと同じ青魚のサプリメントは別の薬とものみ合わせてはならないものがある。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが言う。
「ワルファリンやアスピリンなど血液をサラサラにする薬を服用中の人が青魚の油のサプリメントを摂ると、そこに含まれるDHAやEPAという成分の作用と重複して血液がサラサラになりすぎて出血しやすく、血が止まりにくくなってしまう。場合によっては脳出血などを引き起こし、命にかかわることにもなりかねません」
同様に、精神を落ち着かせる作用を持つ「セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)」のサプリメントも、安易にのむのは危険だ。アクアメディカルクリニック院長の寺田武史さんの話。
「セントジョーンズワートは、経口避妊薬(低用量ピル)や強心薬、免疫抑制剤、気管支拡張剤などの薬の効果を弱める。ほかにもさまざまな薬とののみ合わせが難しいので気をつけてほしい」
取材・文/土屋秀太郎
※女性セブン2022年9月29日・10月6日号